生成人工知能新興大手のアンスローピックは、会社や専門職らが人工知能をどのように仕事に活用しているかに関する調査報告を最近発表した。ベンチャービート誌によると、同調査結果は、生成人工知能利用に関する客観データだけから導き出された実態を示すものとして、現状を認識するうえで貴重といえる。
▽36%近くの職種が仕事の最大25%で活用
生成人工知能チャットボット「クロード(Claude)」の開発元として知られるアンスローピック(Anthropic)は、世界中のクロード利用者たちがクロードと交わした何百万もの匿名化会話を調べた結果、おもにソフトウェア開発や技術的内容の執筆、ビジネス分析を補強するために多用されている、と報告した。
同調査報告書「アンスローピック・エコノミック・インデックス(Anthropic Economic Index)」によると、「業務利用における人工知能活用では、ソフトウェア開発と執筆作業が全体の半分近くを占めている」「しかし、人工知能の利用は経済全体に広まっており、36%近くの職種が、少なくとも4分の1の仕事で人工知能を使っている」。
▽400万人以上のクロード利用者が対象
アンスローピックの同調査結果は、専門家らの予想や考察、自己申告による調査に依存したこれまでの調査とは異なり、労働者たちが生成人工知能をどのように使っているかを客観的データだけにもとづいて示した点において、実態をより正確に反映しているとみられる。
同社は、プライバシーを保護する分析ツール「クリオ(Clio)」を使って、400万人以上のクロード利用者とクロードとの会話を調べ、米労働省の「O*NET」データベースをもとに職業区分地図化した。
▽多用する職種は全体の4%
調べによると、クロード利用者の57%は「拡張(automation)」、つまり人工知能が利用者に取って代わるのではなく処理力を拡張(支援、補佐)する使い方をしていた。そういった拡張には、発案や新案の手がかりの発見や洗練のほか、作業内容の正確さ確認が含まれる。残りの43%は、人工知能が人間の関与を最小限に抑えて作業を実行する「直接自動化」に分類される。
同報告書が示唆するおもな実態として導き出される結論の一つは、生成人工知能ツール群の利用が確実に広まっていると同時に、多用されている職種は一部に限定されるということだ。調査結果によると、「少なくとも75%の作業で人工知能が利用されている職種は全体の4%程度」であり、「最大36%の職種では、少なくとも25%の作業で人工知能が使われている」。
ソフトウェア工学(おもにコード書き)やメディア、販促、コンテント作成といった分野での人工知能利用が進んでいる一方で、医療や運輸、農業といった肉体労働主体の分野では人工知能利用率はいじるしく低かった。
▽中間から高額給与帯が最多利用層
同報告書のもっとも興味深い発見の一つは、人工知能利用が賃金と相関する場合に、単純なパターンでは説明がつかない現象がある点だ。調べによると、低賃金職と高賃金職のどちらかに人工知能利用が集中するのではなく、生成人工知能技術導入の最多賃金帯は中間から高額給与帯にある。
アンスローピックの専門家らはその点について、最高水準の専門知識を必要としない職務においてもっとも積極的に採用されていることを示唆する、という見方を示した。
▽人工知能を使いこなさなければ競争に負ける
世界中の会社らにとって、人工知能技術の導入は単なるコスト削減ではなく、新たな効率性と創造性を引き出すことを意味する。政策立案者らにとっては、人工知能の恩恵が既存の経済格差を深化させるのではなく、公平に分配されるようにするにはどうすればいいかという緊急の課題を提起している。
今後の課題は、そうした変化を測定するだけでなく、変化に備えることにある。昨今では、人工知能代理人(エイジェント)をデジタル労働者という新たな労働力(従業員)として位置づける動きも強まっている。人工知能が労働力としての役割りを拡大し続ければ、人工知能の効果的な使い方を学んだ会社や労働者が成長を続け、そうでない会社は競争に負けることになる。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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