自国第一主義のトランプ政権が仕掛ける貿易戦争や規制変更などの先行きが読めない中、自動車メーカーの2026年以降のロードマップがあいまいになっており、サプライヤーは対応に窮している。
◇主力製品の発売も延期
オートモーティブ・ニュースによると、メーカーの発売延期は需要が停滞するEVだけでなく、第15世代となるフォードの人気ピックアップトラック「F150」のハイブリッド版が少なくとも1年延期されるなど、主力製品にも及んでいる。
GMも、EVと内燃エンジン車の主要モデルに関する大きなデザイン変更を延期しており、関係者の話では、テキサス州アーリントン工場で生産するフルサイズSUV(タホ、サバーバン、ユーコン、エスカレード)の外装と内装の大幅なミッドサイクル・チェンジを1年遅らせる。
自動車メーカーは、連邦の関税、規制政策、EV購入のインセンティブについてより明確な情報を得るため、設備投資や仕入れの決定を可能な限り遅らせている。サプライヤーはメーカーの仕入れの遅れと優柔不断によってパワートレイン事業の戦略や投資の決断が下せず、新規契約の受注間隔が延び、新型コロナ禍から完全には立ち直っていない利益率の回復も滞っている。
◇新車契約の遅れは大打撃
リアは、受注残が予想の3分の1以下に減った。2月の決算発表では、「ラムチャージャー」「ボルボEX90」「ポールスター3」およびGMのEV数車種の想定販売台数の減少と「ラムREV」の発売延期により、新規受注はわずか2億3000万ドルと予想値を下げた。
新車プログラムの延期は自動車メーカーにとっては多額の費用節約になるが、サプライヤーにとっては新車の発売が命綱で、新たな価格設定の機会となる。部品供給契約では通常、部品会社はプログラムが存続する間に毎年2~4%のコスト削減を求められるため、契約終了時には利益率が非常に低くなり、プログラムが延長されればさらに減少する。
スウェーデンのオートリブでは、見積もり金額が18年以来最低となっており、フレドリック・ウェスティン最高財務責任者(CFO)は1月「ドライブトレインに関する不確実性によって自動車メーカーがプロジェクトの調達を遅らせていることについて多くの議論があったが、生産場所の不確実性も見られる」と述べた。
アメリカン・アクスル&マニュファクチャリング(AAM)のデビッド・ダウクCEOも「自動車メーカーが製品ポートフォリオを見直しているため、今後3年間の調達の一部にエアポケットが生じている」と話す。安定的に売れているデトロイト3社のピックアップトラックがAAMの主要事業であるため、内燃エンジン車の販売長期化で恩恵を受ける立場にある。ダウク氏は「多くのプログラムが延長され、業務効率と財務実績を継続的に向上させられる」と述べた。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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