アマゾン(Amazon)やJPモルガン(JP Morgan)、スターバックス(Starbucks)を含む米大企業らがRTO(Return-to-Office、毎日出社)を発表したことで注目されるなか、遠隔労働がすぐにはなくならないことを示す最新の調査結果が明らかになった。
HRグレイプヴァイン誌によると、スタンフォード経済政策研究所(Stanford Institute for Economic Policy Research)が2025年2月に実施したビジネス不確実性調査(Survey of Business Uncertainty=SBU)は、遠隔労働が現在でも有給労働日数全体の約20%を占め、今後1年間に予想される減少はごくわずかに止まるという見通しを明示した。
業種を問わず1000人以上の企業幹部を対象に実施された同調査によると、ハイブリッド労働者(出社と遠隔労働の混合勤務体制)や遠隔労働者を多数かかえる会社のうち、今後12ヵ月以内にRTO義務化を予定している会社の割り合いはわずか12%にとどまった。ほとんどの会社では、毎日出社を義務づけておらず、4分の1以上が週に1〜4日の出社を義務づけていることがわかった。
今回の調査結果は、一部の大企業らのRTO方針が在宅勤務(work from home=WFH)の状況を再形成しているという説を覆すものといえる。RTO義務化の影響は非常に限定的で、遠隔労働の割り合いは21.2%から20.8%に微減しているに過ぎない。
遠隔労働の弾力性は、会社らがRTO方針を実施する際に直面する課題によってさらに浮き彫りになっている。労働形態と意識に関する調査(Survey of Working Arrangements and Attitudes)のデータによると、常勤従業員らがRTO義務化に従う割り合いは44%に過ぎず、14%は即座に退職し、41%は代替雇用を探し始めている。
景気後退は歴史的に雇用者と被雇用者の力学を変化させてきたため、景気後退が毎日出社への回帰をうながすかとうかに関して疑問が投げかけられてきた。しかし、SBUの調査によると、景気が大幅に悪化しても遠隔労働を大きく変化させることはないと予想される。
SBUの調査では、失業率が4%から8%に上昇したと仮定した場合、現在の遠隔労働容認方針をどうするかについて聞いたところ、85%の経営幹部らが変更しないと回答した。WFHの機会を減らすと答えたのはわずか14%だった。労働市場において雇用側が有利になっても遠隔労働を減らさない傾向が明示されたといえる。
今回の調査結果は、事務所家賃のコスト削減や生産性の向上、従業員定着率向上のために遠隔労働が有益だという認識が永続する可能性を示唆する内容といえる。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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