米小売り大手は、激化する貿易戦争を乗り切るため、さまざまな手段を駆使している。
◇サプライヤーに圧力
ウォールストリート・ジャーナルによると、今のところ対策は中国からの輸入品に集中している。トランプ政権は中国製品に対し、2月に10%、3月にさらに10%の追加関税を課した。これを受けて国内の小売り大手は、メーカーや卸業者に値下げや中国からの生産移転を要求しており、応じなければ取引先はビジネスを失うリスクがある。この動きに中国政府も不満を示しており、ウォルマートはサプライヤーの苦情を受けた中国当局から幹部が呼び出された。
サプライヤーの大部分はすでに薄利で営業しているため、値下げは限界に達している。中国のシームレス衣料メーカー、Rongli Garmentsは、2月に10%の関税が課された際、小売り大手ウォルマートに対して5%の値下げに応じたが、さらに10%の追加関税でウォルマートから値下げ幅を10%にするよう要請された。同社はこれ以上の負担は無理と判断したため、ウォルマートは現在、中国以外の国で新しいサプライヤーを探しているという。
住宅改装用品販売大手ホームディーポも同様にサプライヤーに値下げを求めているが、2度目の関税発動後は拒否されることも多く、生産拠点を東南アジアに移して価格を維持したサプライヤーもいる。
◇動き読めず
関税への対応は非常に複雑で、企業にはどういう問題がどこに表れるかが読めないため、将来のリスクへの対策が取りにくい。花の通販を手がけるブークス(Bouqs、カリフォルニア州)は、関税対象国は中国だけを想定していたが、トランプ大統領が突然、不法移民の強制送還を拒んだコロンビアへの制裁関税を口にし始めたため、緊急幹部会議を開いてパートナー企業との生産コスト分担を決めた。米国で売られる切り花の多くはコロンビアから輸入されている。
結局、コロンビア政府は制裁から逃れたため関税も回避されたが、書き入れ時のバレンタイン・デイ直前だったため、花販売業界には大きなストレスとなった。トランプ氏はほかの国への関税もちらつかせており、企業は不確定な状態で生産移転のために経営資源を投じることをためらっている。
◇商品に応じた価格戦略
一方、品質を維持するため関税のコストを吸収してでも中国で生産を続ける価値があると、企業が判断する例もある。会員制量販店大手のコストコは、中国製の屋外家具は他国製よりも品質が高いため、価格を上げてでも販売を継続する予定だ。コスト上昇分は一部をコストコとサプライヤーが吸収し、一部を客に転嫁する。
また、関税の影響を受ける商品の値段がすべて上がる訳でもない。小売り業者は、消費者が購入することの多い商品群を常に念頭に置いて価格戦略を立てている。例えば、消費者がより高額を払ってもいいと考える衣料品などは価格を上げ、バナナやペーパータオルのような日用品は価格を据え置く可能性がある。
小売り大手ターゲットは、クリスマス用の装飾品は値上げせず1個3ドルのまま販売したいと考えており、ほかで利益を補うためストッキングの小幅値上げを検討しているという。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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