自動車業界で技術者不足深刻〜新しい専門的人材が必要に

 自動車業界では、政府の規制強化と並んで技術者不足が大きな問題になっている。

 USAトゥデイによると、経済政策研究所(EPI)の最新調査では、科学、テクノロジー、エンジニアリング、製造分野を専攻した大卒者数は過去最多を記録しているが、製造研究所(MI)の報告では、製造業の高技能職に現在60万人の空きがある。

 次世代車の開発には、馬力、トルク、デザインのほかにさまざまな技術が必要で、雇用主が現在求めているのは、電気自動車(EV)やバッテリー、高度なコンピュータ・システムなどを扱えるソフトウェア、化学、電気系統の技術者といった専門的な人材だ。自動車用ソフトウェアのライン・オブ・コード(LOC=プログラムの行数)は現在2000万にも上り、00年の10倍に増えているが、クライスラーでは1000LOC当たり8件の割合でエラーが発生しており、自動車1台につき16万件に上る可能性がある。

 エラーの90%はソフトウェア開発者やIT関係者が見つけているが、同社のエンジニアリング担当者プリヤ・プラエ氏は「それでもまだ1万5000件のエラーがあるため、検証作業を通して見つけなければならない。われわれには全く違う考え方やエンジニアが必要」と話している。

 日産アメリカズのR&D責任者カーラ・バイロ氏も、自動車エンジニアに必要な中核的能力は今後5年間に劇的に変わると予想しており、「人工知能の知識がある人材が必要で、車は『移動する大型家電』になるため、ソフトや化学エンジニアも必要」という。日産では08〜11年、自然減や景気低迷による雇用凍結によって技術者の数が減ったため、現在ミシガン州ファーミントンヒルズでは主要ポジションだけで20人のエンジニアと10人のマネジャーを増やす必要があり、採用希望者1人当たり4つの職の可能性があるという。

 労働省によると、製造業では00年以降、55歳以上の労働者の割合が大幅に増加し、大量退職に備えた後継者探しが急務となっているが、若い技術者の選択肢が増えているため、自動車業界に集まる人材はあまり多くない。日産のバイロ氏は「今や車の開発はロケットと同じ水準。いかに複雑で高度か知られていない」と話している。

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