気候変動は医学的にも脅威〜「緊急事態」と専門家

 気候変動による健康への影響は甚大で、世界で過去50年間に達成された発展と人々の健康を害する恐れがあると、保健専門家が警告している。

 ロイター通信によると、英医学誌ランセットはこのほど、欧州や中国の気象学者、地理学者、社会学者、環境学者、エネルギー学者といった専門家からなる委員会がまとめたユニーバシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)国際保険額研究所の報告書を掲載した。報告書は、洪水や熱波といった異常気象は感染症、栄養失調、ストレスのリスクを高める危険性があり、汚染された都市は、そこで長時間労働するが散歩やサイクリング、リラックスする時間や場所がない人々の心臓、呼吸器系、精神的健康に悪影響を与えると結論づけている。

 報告書の作成を主導したUCLのアンソニー・コステロ氏は「状況は非常に深刻で、人類の健康や生存に壊滅的な打撃を与える可能性がある。われわれは気候変動を大きな健康問題と見ているが、政策議論ではこの点が無視されることが多い」と指摘。気候変動の抑制は、大気汚染の削減から食の改善に至る直接または間接的な健康上の恩恵をもたらすため、協調して取り組めば世界の健康を改善できる可能性があると見ている。

 気候変動が健康にもたらす直接的な影響は、異常気象の増加によって生まれ、間接的な影響は感染病のパターンの変化、大気汚染、食糧不安、栄養不足、移動、紛争などから生じる。報告書の作成に関わったUCLのヒュー・モンゴメリー氏は「気候変動は医学的な緊急事態で、既存のテクノロジーを使った緊急対応が求められる」と強調した。

 世界保健機関(WHO)によると、心血管疾患は世界の死因の首位を占め、これによる死者は年間約1700万人に上っている。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る