米企業、データ管理をめぐる対応に奔走 〜 EUのセーフ・ハーバー無効化で

 欧州連合(EU)の司法裁判所は、2000年に導入された協定「セーフ・ハーバー(Safe Harbor)」を無効とする判断を10月に下した。その結果、欧州のデータを扱う米技術企業が対応を迫られている。

 セーフ・ハーバーは、EUと米国のあいだにおけるデータ転送に関する取り決めで、米国企業は同協定によって、欧州各国で集めたデータを米国内のサーバーに直接転送することを認められている。

 ところが、米連邦政府諜報機関による個人情報データへのアクセスが暴露されたため、個人情報の漏洩を懸念した欧州当局が協定の取り消しを判断した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米技術企業にとって同協定の無効判断は事業への打撃を意味する。一部の企業は、欧州データを米国内で保存できる法律に準拠した仕組みを引き続き模索しているが、そういった手法も、EUによる今後の判断によって無効にされる可能性がある。

 そうしたなか、欧州にサーバーを新設することで対応する米企業が出始めた。オンライン・フォーム作成サービスを提供するジョットフォーム(JotForm)は、そういった米企業の一つだ。

 同社はこれまで、バージニア州にサーバーを設置して、欧州各国の顧客データを管理していたが、EU裁判所の判断を受けて、サーバーをドイツにを新設し、数十万件の欧州顧客データをドイツに移管していく。

 それと同時に、米企業の幹部らのあいだでは、欧州データを欧州に移すことによるコスト増を懸念する声も出始めている。

 欧州国際政経センター(Europe Centre for International Political Economy)のホスク・リー・マキヤマ長官は、すべての業界の企業が欧州人の個人データを欧州内に保存する場合、そのコストはEU内GDPの1%に相当する、と見積もっている。

 プライバシー擁護派らは、セーフ・ハーバー無効化によって欧州のクラウド・サービスが恩恵を受けるだろうと予想する。

 一方、米国企業のなかには、EUと米国政府のあいだで新たな合意が決まるまで様子を静観するところもあるが、法務部のない中小企業にとって、傍観するのは非常にリスクが高い。そのため、ジョットフォームのように欧州へのサーバー機能の移管を進めざるを得ない。

 スマートフォン向け販促技術とサービスを提供するスワーブ(Swerve)は、2015年初めにセーフ・ハーバー無効化の噂が出るとすぐに、税金や事業運営コストの安いアイルランドにホスティング・サーバーを設置し、欧州向けサービスを立ち上げている。

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