なるほど!海外居住者が行う日本の親の相続手続~①金融機関の相続手続〜

長年海外(日本国外)に居住し、年齢も60代になりそろそろ仕事もリタイアする時期になると、日本に住む親も年齢的に介護や相続のことを考えなければならない時期にさしかかるのではないでしょうか? 介護や相続が必要になった時、兄弟姉妹など身近な親族が日本にいれば自分が海外にいても代わりに手続きをしてくれますが、そうした協力者がいない場合は自分が行わなければなりません。そうした手続きを代行する専門家に依頼する方法もありますが、それなりに費用もかかりますし、またすべてのことを「丸投げ」というわけにもいきません。なかには悪質な専門家がいて、依頼者の自分が日本にいないことを良いことにいい加減な対応をしたり、金銭的な問題を起こしたりする可能性もあります。そのため自分で専門家を選定し、全体の手続きを理解したうえで専門家へ依頼する部分と自分が訪日して行う部分とを区別します。また手続きに必要な書類なども確認したうえで、慎重かつ速やかに手配しなければなりません。

そこで、日本に住む親が亡くなり相続が発生した場合に行う各種の手続きについて、どのような方法や手順で進めればよいかを紹介します。今回は相続時の金融機関の手続きについてです。なお、ここではすでに両親のうち1人が亡くなり、単身となった親が亡くなったケースを想定しています(相続手続きについては今後シリーズで紹介する予定)。

1.相続時に行う金融機関の手続きとは?

被相続人(親)が取引していた銀行、保険会社、証券会社などの口座の解約や残高資産(お金、保険金(積立金)、株式)の引出し手続きとなります。親が蓄え、預けた大事な資産ですから、たとえ子、親族であっても別人が引き出す場合はしっかりとした相続人※1であることの証明が求められます。

2.具体的な手続きの手順

各金融機関に対する相続手続きは各社で若干の違いはありますが、大体以下の手順となります。

①被相続人の書類の準備
被相続人が保有していた各金融機関の口座情報や契約内容がわかる書類を準備します。銀行なら通帳、銀行印、保険会社の場合は保険証、登録印(使用の場合)、証券会社は口座情報がわかる取引明細書等です。

金融機関の店舗(支店)または相続センターへ届出(電話またはオンライン)
大手の金融機関は専用相続センターがあり、オンラインで被相続人ならびに相続人(子など)に関する個人情報や口座情報を入力します。中小の金融機関では直接店舗(支店)に出向いて、窓口で相続手続きの申込を行います。その後、提出書類に関する案内書が送付されます。

③相続手続きに必要となる書類の提出
申請書、フォームについては必要事項を記入し、その他戸籍謄本などの証明書と共に送付または店舗へ持ち込んで提出します(現在はほとんどの金融機関で予約制となっています)。

④審査終了後、資産の引出しと受取
審査のうえ解約手続きが完了すると、預貯金、保険金、株式が相続人の各口座へ移管されます。

  • 銀行:指定した相続人の銀行口座へ振込
  • 保険会社:解約した保険金の保険受取人の銀行口座への振込
  • 証券会社:指定した相続人の証券会社の口座への株式移管※2

3.金融機関への提出書類

提出書類については、日本国内居住者と海外居住者のケースで比較できるよう下記の表にまとめます。

提出期限
特にありません。数年後に手続きしても問題ありません。ただ相続税の納税(期限は死亡後10カ月以内)や、現金以外の財産を複数人の相続人で分割して引き継ぐ場合は、早めに現金化したほうが良いでしょう。

海外居住者が注意すべき点

  • 海外居住者は日本で住民登録されていないため、本人証明のための住民票、印鑑証明書(実印)がありません。そのためそれに代わる在留証明書、サイン証明書、宣誓供述書などの提出が求められます。なお、これらはあくまでも原則的なものです。被相続人、相続人(代理人)の身分状況によって変わりますし、金融機関ごとの対応も変わります。必ず各金融機関の相続担当者へ確認するようにしてください。
  • 戸籍謄本については被相続人の出生までさかのぼっての古い謄本(改正原戸籍)も必要です。理由は相続人(子)が出生する前にすでに別の子がいる可能性があり、その有無を確認するためです。親が転籍(戸籍の住所の変更)を繰り返していた場合は謄本が複数となりますが、現在の戸籍謄本から一つひとつ従前戸籍をたどって探さなければならないため、手間と時間のかかる作業になります。

4.手続きにかかる期間

上記①~④にかかる手続きですが、各金融機関や時期によっても異なります。私がこれまで手続きした経験から言えば、おおよそ以下の期間になります。あくまでも目安としてください。特に海外居住者の場合、④の審査の段階で書類の記入内容の不備や不足書類などの指摘、要請があり、思った以上に時間がかかる場合があります。※3

・①+②の手続き:1~2週間
・③の手続き  :1~2週間
・④の手続き  :3週間~2カ月

いかがでしょうか? 金融機関の相続手続きの全体像が何となくおわかりいただけたと思います。大事なことは、実際に相続手続が必要になった場合は各金融機関の担当者にしっかりと確認するようにしましょう。

備考)
※1:相続人の他、遺言執行人、代理人が手続きすることもできます。
※2:相続人に自身の証券口座がない場合、相続手続き用に仮の証券口座を開設してくれます。
※3:海外から直接手続きする場合の国際郵便にかかる期間は考慮していません。 

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

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