【ニューヨーク不動産最前線】不動産取引における保護対象クラスと例外

連邦レベルで「Fair Housing Act」(公正住宅法)という法律に基づき、保護されるクラスが設定されています。さらに、各州ごとに追加で保護クラスが定められています。たとえば、ニューヨーク州では以下のクラスが保護対象です。不動産業者や大家は、賃貸・売買の際にこれらのステータスを理由に候補者を断ることはできません。

人種、信仰・宗教、肌の色、外国籍・市民権、性的指向、性別・性自認・表現、軍人の地位、年齢、障がい(身体的・精神的)、合法的な収入源、家族構成

この法律の遵守は非常に厳しく求められており、不動産業者や大家が物件を市場に出す際には、必ず「Fair Housing Act」に基づく「Anti-Discrimination Disclosure Form」(差別防止開示書)にサインをする義務があります。また、地下鉄などでも「差別を受けたと思う方はこちらにご連絡ください」といったFair Housingの広告が大きく掲示されています。

それでは、大家やビル管理組合が「この人はコミュニティの一員にしたくない」と感じる場合、それを理由に断っても良いケースはあるのでしょうか?よく見られるのは「喫煙者」や「ペットを飼っている人」です。特に集合住宅では、喫煙や動物が苦手な方もいるため、ロビーやラウンジなどの共有スペースだけでなく、自分の部屋でも禁煙を求められるビルが多くあります。ただし、ペットの場合、盲導犬や介助犬、精神安定のために医師から認められた動物については、大家やビル側が断ることはできません。

また、意外と知られていませんが、マンハッタンでは「外交官不可」としているビルも多いのです。これは、外交官が外国政府から与えられる「外交特権」により、アメリカの裁判所の管轄から除外され、訴えられることがないからです。アパートを借りたり購入したりする際に、大家やビル側が「外交特権の放棄」を求めることはできますが、この特権は個人にではなく外国政府に属しているため、借主本人が放棄することはできません。最終的に、外国政府が特権を放棄することはほとんどないため、大家やビルが外交官を拒否することは合法とされています。

「Fair Housing Act」では、職業、国籍、市民権または移民ステータスをもとにした差別は禁じられていますが、外交特権のステータスはこれには該当しません。このように、不動産取引においては公平性が厳しく求められながらも、特殊なケースが存在することもあり、判断が難しいところです。迷ったときは専門家にご相談ください。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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