燃料電池自動車(FCV)の普及促進を目指して、米北東部で水素燃料補給インフラの建設が進められている。
■次の重要な一歩
ニューヨーク・タイムズによると、米国で燃料切れの心配をせずにFCVに乗ることができる州は今のところカリフォルニアだけで、FCVの販売も同州に限定されている。州内には水素補給所が30カ所あり、2020年までには100カ所に増える見通し。
一方で、自動車メーカーは市場を北東部にも拡張したいと考えており、産業用ガス大手エアリキード(Air Liquide)はトヨタと協力してニューヨークからボストンにかけて12カ所の水素補給所構築を計画。17年内には供用を開始する予定だ。設置場所はニューヨークのブロンクス、ブルックリン両区、ニューヨーク州ヘムステッド、ニュージャージー州ロディ、マサチューセッツ州ハートフォード、ブレイントリー、マンスフィールドなど。
トヨタ先進技術グループのグレグ・スコット責任者は「北東部はFCVの販売拡大における次の重要なステップ。人口の多い北東部州は市場としてカリフォルニアに対抗できる可能性があり、非常に期待できる地域」と見ている。ホンダのスティーブ・センター環境事業開発担当副社長によると、東海岸における水素補給施設の拡大には石油会社なども関心を示しており、同氏は「ボストン、ニューヨーク、ワシントンDCを結ぶ地域の大都市とその間にステーションがほしい」と指摘する。
■最終的には世界中がZEVに
自動車メーカーは、10〜20年後には世界のほとんどの市場で大量のゼロ排ガス車(ZEV)を生産しなければならなくなると見込んでいるため、トランプ政権が先進技術車に対する連邦支援を停止した場合もFCV技術の普及努力を続ける予定だ。FCVにはバッテリー式EVより航続距離が長く、しかも燃料補給にかかる時間が短いなど多くの利点がある。
ホンダの「クラリティFC」やトヨタ「ミライ」といった今あるFCVの燃料補給の仕方はガソリン車とほぼ同じで、車を燃料ポンプの横に停めて、ホースを所定の場所に固定すると水素がタンクに充てんされる。所要時間は3〜5分で、加州ではほとんどの水素ポンプが既存のガソリン・スタンドに設置されている。
今のところFCV販売の先頭を走るのはトヨタで、約1400台のミライを販売しており、販売台数は17年末までに3000台を超える見通し。ホンダが17年に発売したクラリティFCの販売はこれまでに約100台で、ほかに現代自動車もSUV「ツーソン」のFCVバージョンを南カリフォルニアで少数リースしている。
GMとホンダは、将来のFCVに搭載できる動力系システムの大量生産工場をミシガンに建設中で、両者が資源を合わせることで生産を迅速に拡大し、コストを抑えたい考えだ。
ミライとクラリティFCの価格はいずれも約5万8000ドルで、現在ZEVに対しては連邦政府が7500ドル、カリフォルニア州が5000ドルの税控除を提供している。さらに自動車メーカーも独自のインセンティブ(販売奨励策)を加えており、トヨタとホンダは購入後3年間に1万5000ドルまで燃料費を賄えるクレジットカードを提供している。水素燃料はまだガソリンよりはるかに高価で、満タンにするには約75ドルかかる。
さらに両社は、FCV所有者が水素補給施設のない場所に長距離ドライブしなければならなくなった時に、年間最高3週間を限度にレンタカーを提供している。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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