米国内都市圏の住宅所有者らは自然災害に要注意〜異常気象による損害危険の高い地域が明確に

リアルター・ドット・コムによる最新の調査報告書は、全米の住宅の44.8%以上が、洪水や暴風、山火事、異常猛暑、大気汚染のいずれかによる少なくとも1種類の「深刻または極端な気候リスク」に直面している、と指摘する。それらの住宅の総額は約22兆ドルにのぼる。カンザス州のテレビ局KSNによると、近年、異常気象や自然災害による甚大な被害が頻発するなか、米国内都市部の不動産もそういった危険性に直面している、とリアルターは警鐘を鳴らす。

▽洪水リスクが高いのはマイアミ、NYC、タンパ

2023年8月30日には、フロリダ州ガルフポートでのハリケーン「イダリア(Idalia)」が数十万世帯を停電させ、800便以上の旅客航空便を欠航させ、フロリダ州沿岸に洪水をもたらした。

リアルター・ドット・コム(Realtor.com)と気候変動対策技術非営利団体ファースト・ストリート財団(First Street Foundation)によると、米国内で洪水リスクのある住宅総額では、マイアミとその近郊が3239億ドルで首位、次いでニューヨーク市(NYC)とその近郊(2652億ドル)、タンパとその近郊(1262億ドル)となっている。

洪水危険にさらされている不動産価値の国内占有率では、ニューオーリンズが単独の都市として首位だ。

▽リアルター・ドット・コムとファースト・ストリート財団の調査と分析

リアルターの調査結果は、同社の調査報告書「2024年の住宅および気候リスク調査報告(The 2024 Realtor.com Housing and Climate Risk Report)」で公開されている。

ファースト・ストリート財団は最近、膨大な量の蓄積データを分析し、今後30年間に特定の災害が発生する可能性を予想する気候要因リスク点数を発表した。

リアルターの調査報告は、ファースト・ストリート財団の分析内容を加味して、米国内各都市圏の自然災害リスクを評価したものだ。

両社の分析は、自然災害の発生件数や規模よりも、それらが住宅にもたらす被害総額に焦点をあわせている。したがって、被災数が少なくても不動産価値が高い地域が上位に来る。

▽ ハリケーンではマイアミとヒューストン、NYC、山火事ではカリフォルニア

ハリケーン時期には、極端な強風による被害が都市部にもおよぶ。暴風の脅威にさらされている不動産価値では、マイアミとヒューストン、そしてニューヨークが上位3都市だ。市内すべての不動産が暴風被害を受けると見込まれる都市としては、バトン・ルージュとチャールストン、ヒューストン、タンパが挙げられる。

山火事の脅威にさらされている不動産価値の総額では、ロサンゼルス(4479億ドル)とリヴァーサイド(4452億ドル)、サンフランシスコ(2564億ドル)と上位3都市をカリフォルニア州が占める。

山火事脅威にさらされる不動産価値が地域全体に占める割り合いではコロラド・スプリングス(76.4%)が1位だ。

▽ 猛暑の脅威ではマイアミ、大気質ではサンフランシスコ

極度の猛暑の脅威にさらされている不動産価値の合計では、マイアミ=フォート・ローダーデイル=ポンパノ・ビーチ地域が国内最大で、そのあとをオースティンとバトン・ルージュ、ジャクソンヴィル、ヒューストン、タンパと続く。

大気質の脅威にさらされている不動産価値の総額が国内最大なのはサンフランシスコ=オークランド=バークリー地域だ。一方、大気質危険性に直面する不動産が地域内全体に占める割り合いが100%に達するのは、フレズノとサクラメント=ローズヴィル=フォルサム地域、スポケーン=スポケーン・バレー、ストックトンだ。

危険な大気質の原因は山火事だ。

▽フィーマ、賃貸物件在庫の約41%は被災リスク地域内に

「連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency=FEMA、フィーマ)の国家リスク指数によると、全米の賃貸物件在庫(1820万戸)の約41%は、異常気象および気候関連の重大な脅威にさらされている地域に位置する 」。

「不動産は、多くの人たちにとって人生で最大の購入や投資だ。したがって、十分な情報にもとづいた意思決定ができるよう、住宅が現在だけでなく将来的に直面する気候リスクを人々が十分に理解することが重要だ」とリアルター・ドット・コムのモーサム・バット最高技術責任者兼製品責任者は述べた。

米国海洋&大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration=NOAA)によると、米国では1980年以来377件の異常気象および気候災害に見舞われており、その被害額は、人的被害を除けば2兆6700億ドルを超えるという。

▽気候変動対策ソリューション新興企業らの台頭

近年、気候変動対策や自然災害関連の技術開発や技術応用に取り組む新興企業らの誕生や台頭が活発化している。一部の大企業では、そういった新興企業への投資に積極的だ。

ベライゾン(Verizon)の場合、レインコート(Raincoat)とパリメター(Perimeter)、セサミ・ソーラー(Sesame Solar)、10パワー(10Power)という4社に投資している。

レインコートは被災直後の経済回復支援ソリューションを提供し、パリメターは緊急避難時のコミュニケーションと避難管理のソリューション、セサミ・ソーラーは被災時の短期エネルギー・ソリューション、10パワーは貧困地域へのクリーン・エネルギー提供サービスを展開している。

▽生成人工知能技術を応用した新興企業らも登場

また、最近では生成人工知能技術を応用した気候変動対策ソリューションの開発に取り組む新興企業らも台頭しつつある。アマゾン・ウェブ・サービシズ(Amazon WebServices=AWS)では、その代表として、ブレインボックスAI(BrainBox AI)とペンジュラム(Pendulum)、VIAを挙げている。

ブレインボックスAIは生成人工知能による脱炭素化の促進に取り組んでおり、ペンジュラムは供給網を生成人工知能によって脱炭素化させるソリューションを産業界向けに提供し、VIAは建設業界責任者らがエネルギー効率をより良く理解できるよう生成人工知能技術ソリューションを提供している。

そのほかにも、機械視認技術と検知器網、人工知能を統合した山火事早期検出システムや、人工衛星画像群と人工知能分析を組み合わせた早期での異常検出および環境変化追跡といった技術およびサービスを提供する新興企業らも台頭しつつある。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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