AVメーカーら、独自の自動車保険業を展開か 〜データ蓄積と低価格を武器に

 自動運転車(AV=autonomous vehicle)が社会におよぼすさまざまの影響に関する考察が盛んになっている。影響を受ける業界の一つとして自動車保険も挙げられており、2590億ドル市場と言われる米自動車保険業界の激変が確実視される。
 
 フォーブス誌によると、AVメーカーらは、自動車保険事業に乗り出す可能性がきわめて濃厚とみられ、AV向けに最適化された新型の保険事業をみずから立ち上げるだろうと予想される。
 
 既存の自動車保険会社にとって、AVは未知の世界であり統計データがまったくない。そのため、保険会社は利益を確保するために保険料を高く設定すると思われる。それに対してAVメーカーらは、AVに関する各種のデータを蓄積し、事故の内容や原因、責任の所在に関するデータを分析することで、保険業務に不可欠の統計学的数値の精度を大幅に上げることができる。保険料の設定や保険内容の策定にはそういった数値が欠かせない。
 
 しかも、AVメーカーらは保険をみずから提供することで、自動車購入につきまとう保険業者との面倒な手続きを省き、簡便性を消費者に提供できるようになり、その結果、車と保険の抱き合わせ販売で購入を刺激できる。
 
 また、保険業務では一般に、博士号または修士号を持つ数理学者らによる非常に複雑な公式と計算式によって保険内容と保険料が算出されてきたが、AVメーカーらによるAV対象の保険ではそれが劇的に単純化される。従来型保険では、被保険者の年齢や運転歴、事故歴、居住地域、車種、車体の色といった種々の要素が加味されて算出される。それに対しAVの場合、自動運転のハードウェ アとソフトウェアだけがおもな要因となる。しかも、それらに関する性能やデータはAVメーカー自身が把握している。したがって、保険料を引き下げることが可能になる。さらに、保険料は、車載されるハードウェアとソフトウェアの性能によって決定されるため、AVメーカーらは、それらを頻繁に更新することで保険料をさらに引き下げることも可能だ。その結果、従来型保険業者より競争力のある保険サービスを提供できるようになるとみられる。
 
 【https://www.forbes.com/sites/forbestechcouncil/2018/07/02/prediction-self-driving-car-manufacturers-will-own-the-car-insurance-business/#173e08387f3c】(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る