プロクター&ギャンブル(P&G)は、女性用の尿もれ(軽失禁)対策商品を売り込んでいる。
■語りたがらない問題
ウォールストリート・ジャーナルによると、米国人女性の3分の1以上が、失禁や尿もれなど膀胱(ぼうこう)の問題を経験していることが複数の研究で分かっているが、P&Gとキンバリー・クラークの2大メーカーよると、尿もれ対策商品を 使っている人は6人に1人もいない。
現在、軽失禁ケア市場を主導するのは1980年代に「Depend」を発売したキンバリー・クラークで、国内関連商品売り上げの半分以上は同社製が占めている。P&Gは、2014年に「Always Discreet」でこれに続いた。
女性の尿もれ対策市場は非常に利益率が高く、競合が少ない上、人口の高齢化で顧客ベースが拡大している。また、良い商品があるのに使ったことのない人が多いため、競争が激しい家庭用品市場で大きな成長を見込める分野でもある。
問題は、女性がこの問題を語りたがらないという点だ。P&Gは長年、室内の消臭剤やバケツが要らないモップなど、人々が無関心だった問題を解決する商品を売り出して成功してきたが、人が必要としたくない物の販売は難しい。キンバリー・クラークのトム・フォルクCEOも「解決策は見つけたが、消費者をどうやってこの商品分野に導くかの答えは見つけていない」と話す。コンドーム、腸内ガスや性機能不全の薬など、買う時に恥ずかしさを伴う商品の販売は企業の長年の課題だが、成人用おむつは老いと関連する商品である上、薬のように医師が処方する訳ではないため一層売りにくい。尿もれ問題は男性にもあるが、女性の方がはるかに多い。
■試行錯誤
P&Gの最初の市場参入は、惨めな結果に終わった。テレビ広告を流し、売り場の好位置を確保したものの販売は予想に届かず、商品の存在さえ知らない消費者も多かった。このため同社はマーケティングを大きく見直し、CMは女性たちが楽 しそうに踊るものでなく、1人の女性がカメラに向かって尿もれについて語る内容に切り替えた。
最初にパッケージで「diapers(おむつ)」という言葉を使わず、小さな文字で「大人の下着(adult underwear)」と表示したのも逆効果で、売り場からできるだけ速く遠ざかりたいのに視力が低下しているために商品を見つけられない 人が多かったため、文字を大きく表示するようにした。こうした調整を経て、16年には販売が上向き始めたという。
P&Gが次に取り組んだのは、通常商品より6割高い高級ライン「Always Discreet Boutique」だった。ランジェリーのような華やかな商品を作るためファッション・デザイナーを起用し、おしゃれな柄の使用権も購入したが、やはりどう売るかが課題で、パッケージにそろいの下着とブラだけを着たモデルを使うことには社内でも意見が分かれ、過激すぎるとの理由で仕入れを控える小売店もあった。また、セックスアピールを狙った黒とピンクのパッケージは、印象が暗くて落ち込むという社員もいた。それでも「Boutique」シリーズは現在、P&Gの「大人の下着」売り上げの20%を占めている。
一方のキンバリー・クラークは、15年にタンポン式の「Poise Impressa(ポイズ・インプレッサ)」を発売したが、期待に反して販売は伸びず、無料サンプルを試す女性も少なかった。
国内の尿もれ対策商品市場は13年以降30%成長しており、年商は20億ドルに近い。17年のシェアはキンバリー・クラークが53%、P&Gは11%となっている。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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