シリーズ世界へ! YOLO④ タイ〜花と微笑みの国 後編

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

夜から明け方にかけて賑わう花市場Photo © Mirei Sato

夜から明け方にかけて賑わう花市場
Photo © Mirei Sato

花市場は、夜ひらく

 タイでは、生活の様々なシーンに花が使われている。街中には花輪を専門に売るカートが出ているし、女性は花びらを香水代わりに髪や胸元にさす。家やレストランの柱や天井には花飾りが吊るされ、風に揺れるたび、ほのかな香りを漂わす。

 バンコク最大の生花市場、「Pak Klong Talard」へ行ってみた。バンコクの人は、パーティーなど花が必要な時には、必ずここへ買いに来る。24時間営業だが、賑わうのは夜からで、一番混むのが午前3時という不思議な場所だ。

 タイ全土から運ばれてきた色とりどりの花が、所狭しと並んでいる。切り花なら、バラ30本で1ドルちょっと。豆電球の灯りの下、女性たちが、花飾りを一心不乱に作っている。ソンクラーンは、書き入れ時なのだろう。まだ午前零時になる前だったが、市場の狭い路地に、トラックや台車、買い物客が入り乱れていた。

花びらでつくる花輪や飾りは、タイの人々の生活に欠かせない。仏像の手にかけたり、年長者や両親に敬意を表して贈ったりするPhoto © Mirei Sato

花びらでつくる花輪や飾りは、タイの人々の生活に欠かせない。
仏像の手にかけたり、年長者や両親に敬意を表して贈ったりする
Photo © Mirei Sato

甘く涼しい、南国の庭

 暑気払いも兼ねて、私たち一行は、バンコクから南へ車で2時間のリゾート地、パタヤへも足を伸ばした。ベトナム戦争中、米軍兵士の休息地として栄えたことから、猥雑な歓楽街のイメージが強いが、パタヤとその周辺のラヨーンは、花と果物の宝庫。涼をとりながら、農業大国の一端に触れられる観光地が点在している。

 「パタヤ・フローティング・マーケット」は、バンコク周辺に幾つかある水上マーケットの一つ。運河を利用したテーマパークのような作りで、3年前にオープンした。10万平方メートルの敷地に、タイ各地の物産を集めた店や、食べ物を売るボートが並び、昔の面影を楽しめる。お土産選びもいいが、川縁の店や軒先に飾ってある鉢植えを見て回るだけでも、飽きない。

川のそばに栄え、「水の都」とも呼ばれたバンコク。今は、観光地化した水上マーケットばかりが残るPhoto © Mirei Sato

川のそばに栄え、「水の都」とも呼ばれたバンコク。今は、観光地化した水上マーケットばかりが残る
Photo © Mirei Sato

 「ノン・ヌック・トロピカル・ガーデン」は、600エーカーに、ヤシやサボテン、タイに千種はあるというランが咲き乱れる。象や虎にオウムまでいて、歩いてはとても回り切れない。庭木を動物などの形に刈り込んだものを英語でトピアリーと言うが、ここにはトロピカルフルーツの形をしたものまである。

 果樹園「スファトラ・ランド」では、タイの人が「生活の木」と呼ぶココナツについて学んだ。新鮮なものほど、殻の内側にゼリーがたっぷりついている。妊婦がココナツジュースを毎日飲むと、肌がつやつやした赤ちゃんが生まれるそうだ。オイルは、髪の毛に塗ると切れ毛などの傷みを防ぎ、肌に塗ると日焼け止め、アロマセラピー効果もある。殻は捨てずに食器にし、幹は家具に加工する。

様々な顔をもつ、ノン・ヌック・トロピカル・ガーデン。最近は、リゾートホテルとしても人気があるPhoto © Mirei Sato

様々な顔をもつ、ノン・ヌック・トロピカル・ガーデン。最近は、リゾートホテルとしても人気がある
Photo © Mirei Sato

 ガイドの説明を受けながら、ドラゴンフルーツ、サラ(ビワに似て甘酸っぱい)、ファッカーウ(トムヤムクンに使う)など、約20種類の果物を摘み取り、試食した。もちろん、ドリアンも。臭い匂いがまったくしない。「臭いのは、安物や鮮度が落ちたドリアンだけ」だそうだ。体を内側から温める効果もあるという。贅沢に目の前で次から次へと割ってくれるのを、ありがたくかぶりついた。

 この果樹園では、穫れたてを目の前で砕いて作ってくれる、グリーン・パパイヤ・サラダも評判だ。

遊び心いっぱいのテラコッタとサボテンPhoto © Mirei Sato

遊び心いっぱいのテラコッタとサボテン
Photo © Mirei Sato

1 2

3

4 5

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  2. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  3. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  4. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
  5. 私たちは習慣や文化の違いから思わぬトラブルに巻き込まれることがあり、当事務所も多種多様なお...
  6. カナダの大西洋側、ニューファンドランド島の北端に位置するランス·オー·メドー国定史跡は、ヴァイキン...
  7. 2023年12月8日

    アドベンチャー
    山の中の野花 今、私たちは歴史上経験したことのないチャレンジに遭遇している。一つは地球温暖化...
  8. 2023年12月6日

    再度、留学のススメ
    名古屋駅でホストファミリーと涙の別れ(写真提供:名古屋市) 以前に、たとえ短期であっても海外...
ページ上部へ戻る