シリーズアメリカ再発見⑳
パームスプリングスの誘惑

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

サンヤシント山州立公園からの眺め Photo provided by the Palm Springs Aerial Tramway

サンヤシント山州立公園からの眺め
Photo provided by the Palm Springs Aerial Tramway

 ロサンゼルスから東へ、車で約2時間。ここはもう、カリフォルニアの砂漠地帯で、死の谷「デスバレー」もそれほど遠くない。真夏になれば華氏130度を記録したりもする恐ろしい場所。

 ──のはずなのだけれど、パームスプリングスには、いつも青々とヤシの木が生い茂り、水が湧き出ている。ここを「砂漠のオアシス」「ミラージュ」(蜃気楼)と呼ぶ人がいてもおかしくはない。

 サンヤシント山(Mt. San Jacinto)のふもとに広がる砂漠は、大昔は池だった。今は1年に数インチしか雨が降らないが、地下には水がたっぷりある。

 数千年前にここに住み着いたコーウィア・インディアン(Cahuilla)は、この土地を「The Palm of God’s Hand」と呼んでいた。パームスプリングスの街を取り囲むインディアン・キャニオンは、カリフォルニア・ファン・パームという種のヤシの、世界最大の生息地だ。

 南カリフォルニアのシンボルともいえるこのパームツリーだが、天然の原木があるのはパームスプリングスだけ。ロサンゼルスやサンディエゴの街路樹を含めて、ほかの場所にあるパームツリーはすべて「移植」だ。

 緑の葉の下に、フサフサこんもりと茶色の皮がぶらさがっている。腰に蓑を巻いたような、フラダンスの衣装のような。地元の人は「スカートをはいたパームツリー」と表現する。都会に移植された木はたいてい、消防法上の理由から、このスカートを切り落とされてしまう。
 

1

2 3 4 5 6 7

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る