第77回 愛犬と大陸横断(後編)

文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)

 2014年の一大イベントに、秋に実現させた愛犬との大陸横断引っ越しがありました。実は、車での大陸横断引っ越しは15年前にも経験済み。その時は、西から東へ。今回は東から西へ。しかも、今回は犬連れでの旅。果たして無事に完走できるのだろうか…という一抹の不安も襲いましたが、「何が何でもやるしかない!」という意気込みでとにかく出発しました。

 不安と興奮が半々の出発でしたが、蓋を開けてみれば全てが計画通りに運んだ旅。途中で車も人もエンストするというようなハプニングもなく、なんなく完走。ほとんどが順調だったこの旅ですが、一つ困ったのは食事でした。この旅行中、愛犬ノアが生活の変化から来る緊張やストレスで、ほとんど食事をしなくて、とても心配したことは前回の記事で触れましたが、食事に関しては人間側もかなり苦労しました。秋という季節柄、外に出されているテーブルなどで、犬連れで食事をすることが不可能。今回はノアにとっても普段と違うドキドキの毎日ということもあり、一人にして不安にさせないようにしたかったので、ノアを残して人間だけ出かけることは避けました。そこで取った私たちの策はと言うと、旅に同行してくれた友人が一人でレストランに入り食事しながら、私用のテイクアウトを注文。私はそれを車やホテルで食べるという、人間側から見れば淋しい食事の仕方でした。やがて、旅の後半で西に向かって行くと気温も上がり、外での食事が出来るようになり、ようやく皆でテーブルを囲んで楽しいひと時がもてました。

ホテルはペット大歓迎

 出発前一番心配したのが、宿泊先のことでした。周りからペット・フレンドリー・ホテルがたくさんあることは聞いていましたが、事前に調べたホテルが本当にペット歓迎か、サイズや犬種の規制は厳しいのか。また、計画した距離を予定通り走って予約した宿にたどり着けるか。逃したらペット可のホテルが簡単に見つけられるか。最悪は車で一夜を明かすことになるのか。など色んな不安が頭を過ぎりました。でも、そんな心配はただの取り越し苦労で終わり、事前に情報を得ていたチェーンのホテルは、どこも広告通りペット可、というより大歓迎でした。ちなみに利用したのは、La Quinta Inn & Suites、Red Roof Inn、Days Inn、Motel 6です。他にもEcono LodgeやHoliday Inn、また大手のHiltonやSheraton Hotelでもペットとの宿泊オーケーのようです。本当に愛犬と旅行がしやすい世の中になりました!

「僕も立派な宿泊客です」と威張る著者の愛犬ノア

「僕も立派な宿泊客です」と威張る著者の愛犬ノア
Photo © Maho Teraguchi

この旅で得たもの

 この貴重な体験で得たものが一杯あります。同行してくれた友人との車中での人生論。短期間でアメリカの端から端をダイジェスト版のように味わったこと。自分の体力・気力をあらためて知ることができたこと。しかし、何と言っても一番貴重だったのは、ノアとの絆が一層深められたことでした。ノアは状況がどうであれ「母」である私がいれば安心ということを覚え、私は予想以上の頑張りで、この旅を見事に乗り切ったノアへの誇りと信頼度がぐんとアップしました。いつかまた、ノアとの大陸横断旅行をすることになるのかは分かりませんが、ノアも私も、力を合わせて何でも乗り越えられるという大きな自信が出来ました。

 次回は、「犬と家探し」と題し、新天地LAでの犬連れの物件探しの苦労と飼い主のあり方についてお話しします。お楽しみに!

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寺口麻穂 (Maho Teraguchi)

寺口麻穂 (Maho Teraguchi)

ライタープロフィール

在米29年。かつては人間の専門家を目指しサンホセ州立大学・大学院で文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人では「Doggie Project」というビジネスを設立。「人間に100%生活を依存している犬を幸せにすることが人間の責任」を全うするため、犬の飼い主教育やトレーニング、問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し活躍中。

プライベート/グループレッスン、講習会のお問い合わせは:www.doggieproject.com
ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

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