ホワイトカラーもタイムカード
残業規定改正で、使用復活へ
- 2015年11月11日
- 2015年11月20日号掲載

米政府が早ければ2016年から残業手当の適用を拡大することで、対象となる従業員約500万人が長らく遠ざかっていたタイムカードの再使用を強いられることになりそうだ。
ウォールストリート・ジャーナルによると、管理職や専門職の人を労働時間規制から外し残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」の見直しで、雇用者は仕事の再配置やコストの算段に追われている。マネージャーも、従業員に出勤時刻の記録を義務付けることで職場の雰囲気が変わることを危惧している。
従業員を時間のくびきにかける残業規定改正は、柔軟性や自律性を尊重する現代の経営理論に逆行する。タイムカードの使用は伝統的にブルーカラーやサービス職に限定され、ホワイトカラーにとっては時間に束縛されずに昇進の階段を上がることが特典の一つだった。
人材マネジメント協会(SHRM)で政府業務に助言するナンシー・ハマー氏は「多くの人にとって、時給と月給の違いは仕事とキャリアの違いに等しい」と話す。
労働省は、残業手当が適用されない年収の下限を現行の2万3660ドルから5万440ドル(週給970ドル)に引き上げる案を提示した。現時点で改選案が最終決定かどうか明らかにされていない。
地域病院が加盟するミシガン・ヘルス&ホスピタル協会でデータ・アナリストを務めるジェフ・バーマン氏は、改正案が実施されれば時間の記録を余儀なくされる一人だ。稼ぎが増えることは歓迎するバーマン氏だが、「タイムカードに打刻するようになれば専門職の心境ではなくなる」と語った。
SHRMに加盟する会員413人を対象にした調査によると、従業員の柔軟性や自律性が低下するとした回答が67%、自社がコストへの懸念から従業員に残業の機会を与える頻度が減少すると答えた割合は70%に達した。このほか、約900人の会員が労働省に対して改正案に反対するコメントを提出した。
割増手当が反対の声を和らげるという見方もある一方、雇用者の多くはコストを節約するため残業を制限する見通しだ。労働統計局によると、雇用者は毎年残業手当に従業員1人あたり平均540・80ドルを費やしている。
ロサンゼルスのある製造業者は2009年、従業員である工場監督者の一部を生産ラインに戻して時給扱いに再配置した。タイムカードの使用を義務付けられる処遇にベテラン組はかなり落胆したと振り返る。
カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)経営大学院准教授で、従業員の時間認識を研究するサンフォード・デヴォー氏によると、時間給労働者はサラリーマンより時間に高い価値を置く。そのため残業代が支払われると分かれば積極的に仕事を引き受けるが、無給の仕事を敬遠する傾向が高い。
アラバマ州ハンツビルの通信企業アドトラン(Adtran)のトム・スタントン最高経営責任者(CEO)は、従業員に対して自身の役割を単なる仕事とみなさず、必要とされる時に一層の努力をしてほしい、と望む。そのため、新しく残業 手当の対象になる従業員に対して全ての時間を記録するよう求める代わりに、40時間以上働く予定がある時のみ上司に自己申告する制度を導入する。
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