アメリカ エネルギーロードを往く
テキサス編

文&写真/水島伸敏(Text and photos by Nobutoshi Mizushima)

Photo © Nobutoshi Mizushima

Photo © Nobutoshi Mizushima

ミッドランドが近づいてきた。街の手前には水平掘削機がオベリスクの塔のように建っている。それを眺めながら、日が沈んだミッドランドの街へと入っていった。
街中のモーテルはどこもいっぱいで、仕方なく町外れの安モーテルを探した。特別な観光地でもないかぎりアメリカの田舎のモーテルが満室になっていることなど滅多にないのだが、仕事を求めて多くの人が押し寄せてくるこの街ではこういったことが今も起きているらしい。街のエッジ部分には新しく建てられた大型の多目的施設や新興住宅、高級コンドやホテルが立ち並び、オイルフィールドとの境がなくなっている。
モーテルに着くと、仕事を終えた5、6人のオイルマンたちが部屋の前に停めたピックアップトラックの荷台をテーブルがわりにビールを飲んでいた。たくさんの空き缶が置いてあるところをみると、おそらく明るいうちから飲んでいたのだろう。それを横目に、仕事から帰ってきたメキシコ人の親子が静かに部屋へと入って行った。彼らもまた、シェブロンで働くオイルマンだ。まさにオイルの街という感じだ。煌々と夜空を照らし続ける水平掘削機がことのほか近くに見えた。
翌朝6時ごろ、ものすごい地響きでビックリして飛び起きた。すぐ近くにハイウェイがあり、大型トラックは昨日からひっきりなしに通っているのだが、そんな揺れではない。震度で言うなら4ぐらいはある。外に出てみたが、モーテルの工事をしている訳でもなさそうだ。オイルマンたちの車はもうなく、駐車場にはわたしの車だけが残っていた。これが掘削の揺れなのだろうか。確かに固い岩盤に穴をあけているような感じだ。2分ほどでその地響きは止まった。静かになったモーテルの部屋で、ふっと昔のアニメーションを思い出した。大友克洋の「大砲の街」。街中が大砲でできている奇妙なところで、子供たちは毎日学校で大砲の勉強をして、女性たちは大砲の弾を作り、男性はひたすら大砲を何処かへ向けて撃つといった内容だ。なんだか急にそのアニメーションの中に自分が入ってしまったような気にさえなった。

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