アメリカ エネルギーロードを往く
テキサス編

文&写真/水島伸敏(Text and photos by Nobutoshi Mizushima)

Photo © Nobutoshi Mizushima

Photo © Nobutoshi Mizushima

翌朝、ミッドランドを出発した。まだ陽が明けていない暗い道をフォードやシボレー、ダッジなどの大型の4輪駆動車ばかりが走っている。そういえば、この辺りでは日本車はほとんど見かけなかった。窓の外の街を見ながら、現場で働くオイルマンやモーテルにいた人たちを思い出した。彼らを見ていると幸せそうだし、楽しそうなのだが、なぜだか人間というのは何の為に働いているのだろうかと思ってしまう。もちろん、それは生きる為なのだが、仕事のために住む場所やその生活も気にしないのであれば、なんだか働く為に生かされているのではないだろうか。そんな風にさえ思えてきてしまった。
一昨年、北極海の油田開発に揺れるアラスカの小さなエスキモーの村を訪れた時には、村人たちは油田開発の一件に疲れきった様子でその多くは口を閉ざしていた。少数の人が政府や環境団体に向けて小さな反対の声をあげてはいたものの、家族や親戚、友人の間にわだかまりを作りながら、静かに開発は進んでいっていた。まるで、原子力発電所や使用済み核燃料置き場を誘致された日本の村のようだった。北極海の油田開発が進めば、この村の生活を延々と支えてきた伝統のクジラ漁ができなくなる。おそらくほとんどの村人はこの場所で生きる意味を失い、村から離れるだろう。それともこの村もまた、テキサスの街のように、オイル村として栄えていくのだろうか。

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水島伸敏 (Nobutoshi Mizushima)

水島伸敏 (Nobutoshi Mizushima)

ライタープロフィール

アメリカ先住民の取材をライフワークにするため、プエブロ族やナバホ族などが多く住み、ホピ族の居留地にも近いニューメキシコに数年前、ニューヨークから移住。現在はアラスカ最北の先住民やニューメキシコとフォーコーナーズを中心としたアメリカの原子力関連の写真プロジェクトも進行中。

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