今年も税務申告の季節がやってきた。英語で書かれた税務申告書(Tax Form)とその解説書(Instruction)を読むのは大変だが、本特集ではこの税務申告書を日本語で解説。
注:本稿は、特に日系企業の駐在員の方々が、連邦税務申告書を自分で作成できるようにステップを示し、並行して税務申告書に記入していけるように項目順に説明している。本稿で説明する税務申告書は1年間を通して米国に滞在する駐在員を想定して、Form 1040に基づいて解説しており、赴任年・帰任年の申告は特殊な申告となるため、専門家に相談することをお勧めする。本稿における税務申告書とは連邦税務申告書、税法の取り扱いとは内国歳入法(連邦税)のものを指す。
1 申告の手順
1 準備、確認事項
それぞれに必要な所得、控除の書類、税務申告書と解説書を準備する。
居住者用の税務申告書用紙には、Form 1040EZ、Form 1040A、Form 1040があるが、課税所得が10万ドル以上の場合や項目別控除を申告する場合は、Form 1040を使わなければならない。
配偶者と夫婦合算申告を行う場合は、配偶者や扶養者各自がソーシャルセキュリティ番号(SSN)または米国納税者番号(Individual Taxpayer Identification Number =ITIN)を取得する必要がある。ソーシャルセキュリティ番号は、Form SS-5(SSN申請書)と必要書類をSocial Security Administration事務所に提出して申請する。ソーシャルセキュリティ番号を取得できない配偶者や扶養家族は、税務申告書提出時にForm W-7(ITIN申請書)を添付して米国納税者番号を申請する。関連手続きについてはステップ④ (P8)を参照のこと。
豆知識
•IRSのオンラインアカウントにアクセスするには身元を認証する必要がある。連邦税のアカウントに安全にログインするには、IRS.gov/Accountにアクセスする。オンラインで税務記録にアクセスすることもできる。
•2017年より自分の申告記録をIRSから入手するための本人確認方法として、新たにPINは発行せず、前年度の調整後所得金額または前年度自分で選択したPINを使用することを義務づけている。
•申告義務の要件は、居住者の場合、全世界で一定額以上の所得があること。申告資格(Filing Status)および年齢で金額が異なる。たとえば、2017年12月31日時点で双方が65歳未満である夫婦が合算申告をする場合は2万800ドル以上、夫婦個別申告をする場合は4,050ドル以上の所得があると申告義務がある。
•扶養控除の対象となっている子どもでもある一定の所得がある場合は、単独で納税者として申告する必要がある。
•Form W-2や Form 1099の書類は翌年の1月31日までに支払人から個人に発送される。
2 税務申告書への記入
税務申告書を解説書と本誌9ページにある「所得税申告書(Form 1040)の作成」に従って記入する。IRSのウェブサイトでオンライン上で申告情報の入力も可能。
3 必要書類の添付
税務申告書の1ページ目にForm W-2を必ず添付する。その他のForm(Form W-2GやForm 1099-R)は源泉徴収されている場合のみ添付する。夫婦合算申告や人的控除のために納税者番号を取得する必要がある場合は、税務申告書にForm W-7とパスポートの原本もしくは旅券所持証明書を添付し、税務申告書提出時に申請する。その際、税務申告書の郵送先が通常と異なりテキサス州のITIN Operation Centerとなるので注意が必要。税務申告書で報告した所得や控除の証拠書類を税務申告書に添付する必要はないが、後にIRSからの質問や調査があった際に備えて保管しておくこと。
豆知識
•配偶者および子どもの米国納税者番号の申請の際には、パスポート、または旅券所持証明書の提出が必要。
•旅券所持証明書は、在米日本国大使館、または総領事館で取得できる。在住の地域を管轄している在米日本国大使館、または総領事館は以下のサイトで確認。http://www.us.emb-japan.go.jp/j/kankatsu.htm
•IRS Taxpayer Assistance Centerへ直接出向いてパスポートの認証をしてもらうことも可能。IRSに出向く際には完了した申告書を持参。諸条件を満たせば、IRSのAcceptance Agentを通して米国納税者番号を取得することも可能。
•日本では、在日米国大使館または総領事館で取得できる。事前に在日米国大使館または領事館のサイトで予約が必要。
•米国納税者番号を2013年1月1日以前に取得、または過去3年間連続して税務申告書に記載しなかった場合は、更新義務が発生する。
4 税務申告書提出
2017年分の税務申告書の提出期限は祭日の関係で2018年4月17日(火)となる。同日までに税務申告書を提出できない場合はForm 4868を提出することにより申告期限を6カ月延長できる(延長手続き後の提出期限は2017年分は2018年10月15日〈月〉)。税務申告書に納税者本人の署名(夫婦合算申告の場合は配偶者の署名要)と日付を入れ、所轄するIRSへ郵送。郵送先は税務申告書の解説書にて確認。税務申告書提出時に米国納税者番号を申請する場合はForm W-7を税務申告書に添付して下記の住所に郵送する。郵送手段により郵送先住所が変わるので、注意が必要。
USPSを利用する場合
Internal Revenue Service
ITIN Operation
P.O. Box 149342
Austin, TX 78714-9342
USPS以外のPrivate Carrier(FedEx等)を利用する場合
Internal Revenue Service
ITIN Operation
Mail Stop 6090-AUSC
3651 S. Interregional, Hwy 35
Austin, TX 78741-0000
豆知識
•4月15日が週末や祝日となる場合は次の事業日が申告締切日になる。今年の4月15日は日曜日のため、次の月曜日である4月16日が本来の締切日だが、その日はIRSの所在地であるワシントンDCの祝日にあたるため、2017年の申告期限は4月17日(火)消印有効となる。
•国外から送付する場合は、期限までにアメリカのIRSに必着。
•税務申告書を郵送する場合は、特に税金の追加支払いを必要とする際は、提出遅延、支払い遅延に課せられる罰金と利子を回避するため、Certified Mail (書留郵便)の利用をお勧めする。
•延長手続きをした場合、税金の支払期限は当初の申告締切日となる。多額の納付が遅れると、この延長も無効となる。
5 書類の保管、修正申告、税務調査
税務申告書の作成に使った書類は、所得や控除の証拠書類として最低でも時効が成立する3年間は保管が必要。IRSはこの期間に手紙で税務申告書について問い合わせをしたり、調査官による税務調査を行ったりする。申告内容の立証責任は納税者側にあるので、納税者が申告内容を証明できない場合は、控除が否認されて追徴税や利子、ペナルティの対象になることもある。
豆知識
•無申告年度や不正、虚偽申告年度には時効が適用されない。
•総所得の25%を超える過少申告がある場合、時効は3年から6年に延長される。
•賃貸不動産や証券の購入価格など、減価償却や将来の課税所得の計算に必要となる書類は同資産を保有している限り保管する必要がある。
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