バイデン政権とは?

情報提供/ピルズベリー法律事務所

外交政策

バイデン氏は、トランプ政権の外交哲学を否定しました。バイデン氏は、従来の同盟関係を復活させ、また、諸外国との連携を活性化することで、気候変動、人権侵害および民主主義の後退という問題において、より厳しい姿勢をとることを約束しました。パリ協定や包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action = JCPOA)などの条約に再加盟することにより、アメリカの世界のリーダーとしての地位を再度主張していくことを目指します。バイデン氏は、トランプ政権と同様に、中東における「永遠の戦争(forever wars)」から軍隊を撤退させることを目標としていますが、サウジアラビアのような地域大国とはこれまでのような友好関係は続かないでしょう。

バイデン氏は、他国との新たな同盟関係の構築、欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)加盟国との連携の再構築、民主主義的な価値観の強調、ならびに外交活動への注力により、国際問題に取り組み、敵対勢力に立ち向かうことを約束してきました。当初諸国とは、世界情勢とそのなかでの米国の位置付けに関しては似たような懸念を共有しているものの、その価値観、手段、どの国とパートナーとなりうるかは国によって大きく異なっています。価値観を重視する外交政策を目標として推し進めるなかでは、経済的利益の優先度はやや下がる可能性が高いでしょう。この目標達成のため、バイデン氏は、国務省と国際援助機関の予算を増額するでしょう。

大部分において、バイデン氏が中心となって作成および実行した、オバマ政権の外交政策に回帰することが基本となるでしょう。しかし、現在の状況では、国際問題に対してより積極的で、時には攻撃的なアプローチを余儀なくされるでしょう。中国、ロシアおよび北朝鮮の金正恩体制のような政権との関係は緊迫しており、バイデン氏には、トランプ政権のように前提条件なしの交渉を行う傾向はないでしょう。バイデン氏は、南米への関与を新たにし、援助や投資を大幅に増やすとともに、キューバや中米諸国との正常化に向けた道に回帰することを呼びかけています。しかし、ベネズエラに関しては、近い将来、外交政策にほとんど変化はないと思われます。

税制改革

バイデン氏は、意欲的な公共支出の提出の実行および再生可能エネルギーへの投資支援のための財源として、企業や高所得者への増税および雇用の海外移転の冷遇に焦点を当てた広範な税制改革を計画しています。主な提案は、法人税率を21%から28%に引き上げるというものですが、これは実現することのなかったオバマ政権時代の減税構想と同じものです。海外の事業については、グローバル無形資産低課税所得(Global Intangible Law-Taxed Income)の実効税率が10.5%から21%へと2倍に引き上げられます。これは、2017年税制改革法(Tax Cuts and Jobs Act)第250条の控除を50%から25%に減らすことで実現されるものと思われます。

バイデン氏は、飴と鞭を用いて、サプライチェーンを国内に戻すように企業を奨励する税制改革を約束しました。製品を再輸入するアメリカ企業に対しては、利益に対して最大30.8%の税金を課す一方で、米国内の製造業部門を再活性化させる投資に対しては10%の税額控除を新たに設け、重要な製品のサプライチェーンの移転に対しても同様のインセンティブを与える旨の一連の提案がなされました。また、炭素排出量の削減や労働基準向上のインセンティブを与えるために、さまざまな新しい税制優遇制度が導入され、または既存の税制優遇制度が拡大される可能性もあります。

個人の税金については、バイデン氏は、高所得者や投資家の税負担を引き上げる税制改革を提案しています。選挙活動において、100万ドル以上の所得およびキャピタルゲインについて、これらの所得類型にまたがる39.6%の税率が提案されました。また、2009年に存在した相続税を復活させることも提案しています。この提案によって利益を受けるのは主に低所得者世帯となり、家の購入、生活費、医療保険制度改革法(Affordable Care Act、いわゆるオバマケア)の保険料について、拡大された税額控除を享受することができます。

現実的には、バイデン氏の税制政策の大綱(特に法人税率と個人所得税の最高税率の引き上げ案)は、共和党が支配する上院となった場合には当初より成立する見込みがなく、民主党がかろうじて過半数を占める上院となった場合でもおそらく成立しないものと思われます。バイデン氏は税法についての支持を得るためにさまざまな譲歩をしなければならないでしょうが、機敏なアメリカのビジネス界は、新しい政治情勢の中で税制政策についての攻防を行うための準備をしています。要するに、事業者が税に関する議論の場にいなければ、みずからに不利益が及ぶかもしれないということです。

インフラ政策

“Build Back Better(より良い復興)” スローガンをテーマにした選挙活動に関連して、バイデン氏は、アメリカ経済のエコフレンドリー化を目標とした2兆ドルの投資パッケージの中でも、特にインフラ分野を優先する可能性が高いと考えられます。今後10年間で1.3兆ドルをインフラ関連プログラムに充てる可能性があります。老朽化した道路網の再建と連邦道路信託基金の安定化に向けた500億ドルが、最優先事項として投資されるでしょう。新政権がトランプ政権の規制緩和の撤回に取り組む中で、重要なプロジェクトを迅速に進める可能性がありつつも、環境への配慮がより重視される点から、許認可プロセスに変更が加えられることが予想されます。

連邦政府プロジェクトの請負業者には、「バイ・アメリカン」政策の要件や、マークリー上院議員の21世紀エネルギーのための仕事法(Good Jobs for 21st Century Energy Act)、プロジェクト別労働協定・地域労働協定(Project Labor and Community Workforce Agreements)および現在提案されている連邦最低賃金時給15ドルなど、新たな労働規則へのコンプライアンスが求められることになるでしょう。バイデン氏が推進するとみられている主要プロジェクトへの参加を検討している企業は、このような想定されうる規制へのコンプライアンスに対応しているか確認する必要があるでしょう。

エネルギーインフラや省エネイニシアティブへの積極的な投資とは別に、バイデン氏は、都市交通、農村部の水路、鉄道輸送ネットワークの拡大および空港改善プログラムのための連邦航空局の資金の倍増のために連邦政府の資金を利用できるようにすることが優先事項であると宣言しています。バイデン氏の提案する他の投資計画に関する議論と同様に、本件についても連邦議会で激しい党派争いが繰り広げられることになるでしょう。しかし、連邦支出は、景気回復に向けて平常よりも必要とされており、低金利によって提供される可能性が高いことから、バイデン氏の優先事項の少なくとも一部は可決されるのではないかと考えられます。

倫理規範・政治活動規制

バイデン氏は、倫理規範と政治活動の包括的な改革を約束しました。政府職員の倫理および利益相反を避けるための投資売却要件の拡大、公益通報者の保護強化、連邦政府の検査局長の監督権限強化は、容易に実現できると思われます。また、バイデン氏は、政府職員の間での腐敗・外国勢力による干渉に効果的に対処するため、連邦倫理委員会の設置を提案しています。

バイデン氏は、外国政府とつながりをもつまたは外国政府から資金援助を受けている私人によるロビー活動の禁止を含め、外国政府を代表したロビー活動を完全に禁止するため、外国代理人登録法(FARA)の改正など、ロビー活動および外国の影響に関する情報開示を充実させる計画を提案しました。

また、新政権は、以下を含む選挙資金に関する取り組みを提案しています。

●内国歳入法上の501条(c)項(4)号の非営利団体(主に社会福祉団体)による選挙支出を禁止し、「闇」献金ルートをなくすこと。

●政治活動特別委員会(スーパーPAC)をあらゆる政党から完全に独立させること。

●政治広告を出すまたは連邦政府の役職の候補者に有利もしくは不利な選挙活動を行うすべての団体に、寄付者の開示を義務化すること。

アメリカ政府の内外の利害関係をめぐる政治的な論争は、新政権の重要な論点となるでしょう。パイデン氏は、ウォール街との結びつきや特別利害関係がある個人を内閣・省庁の主要ポストに指名せず、また左派から選挙キャンペーン中に掲げた倫理規範に関する多くの提案を実行するよう圧力を受ける可能性が高いと思われます。進歩派が求めているウォール街出身者の排除は、民主党内の他の派閥から、新政権から専門性を奪い、人種・民族の多様性も損なうおそれがあるとして反発を受けてきました。この点は、政権移行期間および発足後100日において、党内の議論の火種となる可能性が高いです。

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