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こんなに違う!運用コストが与える長期パフォーマンスへの影響
- 2024年10月8日
多くの方はMutual FundやETF(Exchange Traded Fund)といった、いわゆる「ファンド」で資産運用・資産形成を行っていることと思います。Mutual Fundは1924年に誕生したので今年でちょうど100年、ETFは1993年生まれで31年になります。このファンドによる資産運用は、少額から分散投資でき、ほとんどの方にとって個別銘柄に投資するより現実的・効率的な選択肢です。
皆さんはファンドを選ぶときに、どの項目をチェックしますか。運用会社、運用内容も大事ですが、コストも確認が欠かせません。近年は購入時のTransaction feeがかかることは稀になってきましたので、コストは資産残高に対してかかるNet Expense Ratioになります。例えば、0.50%のNet Expense Ratioのファンドに10万ドル投資した場合、年率で500ドルのコストがファンドから自動的に差し引かれます(実際には日々変動する資産残高から計算されますので、差し引かれるコストも変動します)。
ファンドによって異なるコスト水準
下のグラフのように、過去30年弱の間でファンドのコストは大きく下がってきました。特にアクティブ運用(リサーチなどに基づいて有望な銘柄群に投資し、インデックスを上回ることを目指す)からパッシブ運用(インデックスに追随することを目指す)への投資家のシフトもあり、株式ファンドの資産加重平均フィーは年率1.04%(1996)から0.42%(2023)に0.62%低下、債券ファンドも同じく年率0.84%(1996)から0.37%(2023)に0.47%低下しました。
平均的にはファンドのコストは低下傾向にあるものの、どのファンドを選ぶかによってコスト格差は大きいものがあります(下表)。株式ファンドや債券ファンドの上位10%と下位10%では1%以上の差がありますし、株式ファンドとインデックス運用の株式ファンドでは中央値で0.76%異なります。ファンドを購入する際には、ファンド・フィー(Net Expense Ratio)の確認が欠かせないことが分かります。
資産クラスやアセット・アロケーションによって異なるので一概に言えませんが、アクティブ運用だったら0.5%以下、パッシブ運用なら0.1%以下であれば低廉なファンドと言っていいでしょう。
運用コストが与える長期パフォーマンスへの影響
では、株式・債券のバランス・ファンドで30年間運用することを想定して、運用コストによる長期パフォーマンスの違いを試算してみましょう。この試算では、バランス・ファンドの年率パフォーマンスを5%とし、運用コスト0.1%、0.5%、1%の3パターンを比較してみます。
下のグラフは運用開始時点の資産額を10万ドルとして、その後30年にわたってどのように伸びていくか示したものです。これを見ると、運用コスト0.1%と0.5%、0.5%と1%の間で長期の運用成果にそれぞれ4-5万ドル程度の差が生じています。30年後の資産額の10-15%にあたり、運用コストの長期的な影響はかなり大きいことが分かります。
また、運用年数ごとの運用成果の差は、実際の支払いコストと、その分の運用ができないことによる機会コストに相当します。この(機会コストを含む)運用コストの累計をグラフにすると以下のようになります。
これらの試算を見ると、運用コストの大切さが明確に理解できます。提供されている商品ラインナップの中で運用コストをファンド選択基準の一つにすることのほか、(より良い商品をラインナップしている)金融機関を選ぶ基準にもなります。また、勤務先の退職プラン(401(k)など)には商品ラインナップが限定的で、運用コストが高いファンドしか選びようがない場合があります。そのような時には、より選択肢の充実したIRAへのロールオーバーも選択肢になってくるでしょう(優良・低廉な商品が提供されている退職プランであれば、必ずしもIRAにロールオーバーする必要はありません)。
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