日本酒を世界酒に。
- 2024年10月25日
TOP INTERVIEW アメリカ市場に勝負を賭ける日系企業のトップに聞く。
株式会社WAKAZE 代表取締役社長
稲川琢磨/ Takuma Inagawa

日本、フランス、アメリカへと事業を拡大した株式会社WAKAZEの代表取締役社長、稲川琢磨さんに、アメリカでのスパークリング酒普及の挑戦について話を聞いた。
日本酒ビジネスのスタートと拡大
日本で会社を設立して3年後、フランスでフランス人の好みに合った日本酒を開発するため、ワイン酵母や白麹を使用して酒造りを始めました。ローカライズされた味わいが市場にフィットし、次にアメリカで事業を展開することにしました。アメリカで感じた大きな課題は、多くの人が日本酒を美味しいと思っている一方で、どこで買えるのか知らない人が多いことです。市場規模を10倍、100倍と拡大するには、小売りでの展開が必要だと考え、手に取りやすい6ドルの缶入り日本酒「Summer Fall」を提供することにしました。カリフォルニアの気候に合わせてアウトドアでも楽しんでもらえる商品です。ただし、この価格設定を実現するには大量生産が必要です。そこで宝酒造さんと提携し、カリフォルニア州バークレーの工場で缶入りの日本酒の製造・販売事業を開始しました。
健康志向とマーケティング戦略

弊社の日本酒はアルコール度数11%で、発酵のみで作られています。使用している原料は米と麹と水の3つだけです。日本酒はグルテンフリーで、ワインやビールに含まれる頭痛を引き起こす成分が含まれてないため、よりクリーンなアルコールとして広まっていく可能性があります。アメリカでは、健康志向の新しいカテゴリーが急速に立ち上がる傾向にあります。その点でカリフォルニアは非常に適した場所だと考えています。アルコール自体はそんな体に良くないとされがちですが、その中でも「Better For You(健康志向)や「Better Booze(より良いお酒)」という文化を作り、アメリカのメインストリームでも受け入れられるようにしたいと考えています。
アメリカ市場で日本企業が直面するチャンスと挑戦
アメリカの良い点は、変化のスピードが早いことです。特にカリフォルニアでは新しいものをどんどん取り入れようという文化が顕著で、何でも試してみる姿勢が強く見られます。これがアメリカの素晴らしいところだと思います。 一方で難しい点もあります。それは、日本企業としてメインストリームに入っていくことの難しさです。アジアの食文化は、どうしてもニッチなものと見なされがちです。日本から進出した企業や食べ物も例外でなく、そこにアメリカ進出の課題があります。そうした中で、いかにアメリカの主流文化に馴染んでいくかが大きな挑戦です。
今後の展望
今後、この「Summer Fall」を全米で誰もが知る有名なブランドにしたいと考えています。アメリカ市場での認知度を高め、最終的には20州まで展開したいと思っています。同時に世界展開も目指しており、フランスにも拠点があるのでヨーロッパ全土、日本を含めたアジアにも進出したいと考えています。中長期的には、ハードセルツァやクラフトビールと並ぶようなブランドに成長させたいです。自社のブランドを大きくするだけでなく、日本酒の文化を伝えていくことも大切だと思っています。その使命を果たすために私たちが市場をリードし、最終的には日本酒を世界中に広めることを目指していきたいです。

Profile
稲川琢磨
株式会社WAKAZEの代表取締役社長。慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了。前職はボストンコンサルティング・グループにて経営戦略コンサルタント。2016年に独立・起業しWAKAZEを設立。2019年にフランスに移住しパリ醸造所の陣頭指揮を取り、2023年からはアメリカで宝ホールディングスと資本提携し、スパークリング酒「Summer Fall」の拡大を目指す。
Wakaze Sake https://www.wakaze-sake.com/
Summer Fall Sake https://summerfallsake.com/
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします