自動運転車の実用化を目指す企業は、米国内のさまざまな場所で公道試験を行おうとしているが、地方自治体からの反発に遭うことが増えている。
■マンハッタンは保留
ウォールストリート・ジャーナルによると、ゼネラル・モーターズ(GM)は 2017年、ニューヨーク市内では初めてとなる自動運転車の公道試験計画を発表した。18年初頭から始める予定だったが、関係者によるとビル・デブラジオ市長が安全性に懸念を示したため、中心部マンハッタンでの試験は保留となっている。
シカゴでは、市議会運輸委員会の委員長が、安全懸念やタクシー運転手などの雇用に影響が出る可能性を理由に、自動運転車の導入阻止を表明した。自動運転車の研究開発が盛んなペンシルベニア州ピッツバーグでさえ、最近では条件を厳格化し、自動運転車の公道試験を認める前に安全システムの作動方法に関する詳細な説明を求めている。
3月にウーバー・テクノロジーズの自動運転車がアリゾナで公道試験中に死亡事故を起こしたことを受け、交通量の多い大都市を中心に試作車の公道試験に対する懸念が高まっている。また、都市リーダーの多くは企業に対し、先進技術が渋滞の軽減や低所得層の移動支援など、幅広い社会的利益をもたらすことを示すよう求めるようになっている。
さらに連邦上院では、自動運転車に関する全米規制の導入を目指す法案の審議が停滞している。全国的な方向性が示されないと、州や自治体が独自に動いて雑多な規則ができることになり、技術開発に多額を投じている企業にとっては過度な官僚主義に阻まれてなかなか利益につながらなくなる恐れがある。
■小都市は積極的に受け入れ
一方、GMやアルファベット傘下のウェイモ(Waymo)は何年も前から一部の地域で自動運転車のテストを行っており、有料サービスの開始も間近となっている。GMはこれまで多くの試験を実施してきたサンフランシスコで19年から自動運転タクシー(ロボタクシー)サービスを始める計画で、ウェイモも最近、近くアリゾナ州フェニックス地区で自動運転車の移動サービスを始めると発表している。
GMのダン・アンマン社長によると、多くの州や自治体は同社の自動運転車部門クルーズによる公道試験やロボタクシー・サービスを歓迎しているといい、「安全の実績を積み重ね、消費者に受け入れられるようなほかとは違う製品であることを実証すれば、役所も恩恵を理解できる」と話す。
GMは19年末までに商用サービスを展開したいと考えている。ニューヨークでは、アンドリュー・クオモ知事と連携して州内公道での自動運転車の試験の合法化に成功したが、NY市長の承認を得ないままマンハッタンでの試験を進めるつもりはないという。
ピッツバーグ市の当局者は、企業には乗用車より自動運転バスやシャトルの開発を望んでいる。ロボタクシーが増えると混雑が一層ひどくなるというのが理由だが、より小さな都市は、新しい投資を引きつけ、先進サービスをいち早く導入した場所になることを望んで自動運転車の開発企業を歓迎している。
アリゾナ州チャンドラーの場合、ウェイモによる自動運転のミニバンを使った公道試験を受け入れた。また、ダイムラーとロバート・ボッシュは、19年下半期からカリフォルニア州サンノゼで自動運転車を使った配車サービスの試験を計画している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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