不眠症から皮膚病までさまざまな症状を、医師や処方薬に頼らず自分で解決しようとする人が増えている。一般消費財大手プロクター&ギャンブル(P&G)はこの「DIYヘルスケア」のトレンドに乗ろうとしている。
■健康は自分で管理
ウォールストリート・ジャーナルによると、紙おむつ「パンパース」やかみそり「ジレット」などのブランドで知られるP&Gは、10年前に製薬事業から撤退し、最近はビタミンやサプリメント(栄養補助食品)、処方せんのいらない睡眠導入剤、更年期障害の自然治療薬などでウェルネスおよびセルフケア分野に力を入れている。
最近は、同社のベンチャー部門とベンチャーキャピタル会社M13の合弁事業が、最初の商品として、更年期障害用にホルモンを使わないローションやサプリメントを提供する 「キンドラ(Kindra)」シリーズを発売した。同ブランドのソン・ホンジュCEOは「以前とは変わって自分の健康を自己管理する人が増えてきた」と話している。
従来の医療がより高価になり、化学物質を使わない治療への関心が高まるにつれて、ビタミン、サプリメント、自然療法で独自の健康的解決法を探す人が増えている。代替医療は以前からあったが、ホール・フーズなどの高級小売店やドラッグストア、小売り大手を含めた大衆市場がこうした商品に力を入れているため、DIYヘルスケア商品が一段と主流に近づいており、小売店は健康維持商品を取りそろえ、新興、既存企業ともに新商品を投入している。
グローバル・ウェルネス・インスティチュートによると、2017年に世界の消費者がパーソナルケア、美容、アンチエイジング、健康的な食事、栄養、減量などさまざまなウェルネス関連分野に投じた支出は約1兆8000億ドルで、その2年前から約4%増加した。
P&Gの同業もウェルネス市場に参入している。クロロックスは18年にサプリメント会社ニュートラネクスト(Nutranext)を買収、ユニリーバは19年、ビタミンやプロテイン・バーを作っているオリー・ニュートリション(OLLY Nutrition)を買収すると発表している。
■成長戦略の鍵
10年間の販売不振からようやく脱したP&Gは、成長を維持し収益性を改善する戦略のカギはヘルスケアだと考えている。ジョン・モーラー最高財務責任者(CFO)は「セルフケア製品は比較的収益性が高く、消費者はそれを毎日使うため魅力的な分野。人口が高齢化し、医療費の負担が増えて伝統的医療に代わるものが求められるようになるにつれ、ビジネスが伸びる可能性が高い」と見ている。
市場調査バーンスタインはP&Gのヘルスケア事業について、向こう3年間に20%以上成長し、売り上げ構成比が現在の12%から13%に上昇すると予想している。P&Gのヘルスケア事業には、「ヴィックス」や「ナイクィル(NyQuil)」などのかぜ薬、「クレスト」や「オーラルB」といった口腔ケア・ブランドを含むOTC(処方せん不要)商品が含まれる。さらに19年は42億ドルでメルクの消費者向けヘルス事業を買収してビタミンや食品サプリメントなどを品揃えに加えた。
DIYヘルスケアの新商品開発にも取り組んでおり、この夏は睡眠導入剤「ジークィル(ZzzQuil)」を発売したほか、「キンドラ」を出した合弁事業は湿疹や乾癬といった皮膚病用にステロイドを含まない治療薬「ボードウェル(Bodewell)」も開発している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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