マッキンゼー・グローバル研究所は、中国、フランス、ドイツ、英国、米国の 消費者を対象とした調査を基に、新型コロナウイルスのパンデミックによって増 えた一連の支出行動を分析し、どれがコロナ禍の収束後も継続するかを予測し た。
■全日出勤には戻らず
ロイター通信によると、高収入労働者の多くはフルタイムのオフィス勤務には 戻らず、「巣ごもり」需要は続き、ホームオフィス、フィットネス機器、自宅改 修などへの支出は引き続き伸びるとの分析結果が出た。
マッキンゼー報告書は特に、仕事と家族の世話のバランスを取ってきた高所得 の中年女性グループと、相当の貯蓄があるが見通しがもっと確実になるまで支出 を控えるより若い高額所得者グループのこの1年間の行動が、コロナ後の経済に 大きな影響を与えると見ている。
報告書ではこのほか、以下のような傾向が指摘された。
■オンライン医療
パンデミックの間、オンライン医療の利用はドイツで10倍、米国で25倍、フラ ンスで50倍に増加した。これが続くかどうかは、規制当局や保険会社にこうした 診療に関する規則の一時的な緩和を恒久化する準備があるかにかかっている。ニ ューヨーク大学ランゴーン医療センター・バーチャル救急医療部門のビラジ・ラ クダワラ医師によると、2020年は新型コロナ以外の症例のオンライン診療予約が 3倍に増えており、この傾向は続くと予想される。「(パンデミックでオンライ ン診療の)勢いがついた。人々は、未経験だがそれ以外に選択の余地がないもの を試すようになった」(ラクダワラ氏)
■通販
食料品の総支出に占めるオンライン通販の比率は過去1年間で倍増し、米国と 英国では約10%に達した。ドイツの食材宅配サービス会社ハローフレッシュのド ミニク・リヒターCEOは「消費者の食料の購入方法に、不可逆的で根本的な変化 が見られた」と指摘する。かつては食品のオンライン購入をためらっていた年配 の消費者も選択を余儀なくされ、パンデミック後もオンラインで買い物を続ける 可能性がある。
■ホームエンターテイメント
5カ国の消費者の60%以上は、加入したホームエンターテインメント・サービス の一部を利用し続ける意向で、映画館や劇場の需要が長期的に低下する可能性が ある。劇場ストリーミング・サービス、ブロードウェイHDの共同創設者ボニー・ コムリー氏は、パンデミック後も、特に劇場用チケットが高くて買えない人々の 間でデジタル有料サービスの人気が続くと予想する。「ライブシアターやライブ 体験は復活すると信じているが、元通りにはならず多層化するだろう」
■旅行
消費者の20%以上は、最も早く再開したい活動の1つに娯楽のための旅行を挙げ たが、行ける場所やその価格が以前通りとなるかは不明だ。一方、パンデミック 後は出張旅行が20%減ると予想され、以前はビジネス客の利用でレジャー客の席 を埋めていた航空会社にはコスト圧力がかかる見通し。パンデミック前は座席需 要のわずか10%が利益の55~75%に貢献していたが、ビデオ会議や在宅勤務の普及 で、直接会う出張のニーズが減る可能性がある。「多くの企業は、コストと気候 変動の両方の理由から出張を減らす方法を探していた」ともいわれている。
■リモート授業
オンライン学習は、パンデミックによって教育が中断された16億人の子供たち に一時的な解決策を提供したが、生徒や教師からは不満が強い。低所得世帯と高 所得世帯の子供たちの間に大きな差も見られたため、続く可能性は低いと見られ ている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
ターゲットとショッピファイが提携 〜 ターゲットのオンラインいちばに中小の小売業者らが出店可能に
-
人工知能銘柄が今後10年の株式市場を動かす 〜 シスコの元CEOのベンチャー・キャピタリストが予想
-
2024年7月8日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
スマート包帯の研究&開発が前進 〜 傷口の状態を遠隔追跡、包帯から投薬や電気刺激を可能に
-
飲食店で印刷メニューが復活~QRコード不評で
-
2024年7月1日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス
ウェザーXM、ウェブ3とIoTで気象データに革新 〜 動く気象観測所群の分散型連携網を構築
-
米消費者のガソリン車好き続く~KPMGの意識調査
-
2024年6月27日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
対中EV貿易戦争、様々な副作用も
-
傷が早く治る、次世代ばんそうこう~医師との通信も可能に
-
生体認証決済が米国で拡大しつつある 〜 マスターカードやJPモルガンも導入へ
-
米国特許商標庁、出願者らの個人住所流出が再発 〜「不注意」が原因、影響を受けた人たちに通知