米国では、人種差別問題に対するブランドの姿勢によってその製品を使うかどうか判断する人が増えていることが、広告大手エデルマンの調査で明らかになった。
■ブランドより企業を信頼
ウォールストリート・ジャーナルによると、エデルマンは2020年5月の白人警察官による黒人のジョージ・フロイド氏殺害に端を発した抗議行動を受けて、米国人2000人を対象にビジネスと人種差別に対する考え方を尋ねる調査を同年6月以降3回実施している。
21年4月の最新調査では、特に人種問題に関するブランドの行動に対する意識の変化が目立った。企業もブランドも、この問題に関して過半数の賛同を得ているところは1つもないが、企業については消費者の37%が「変化を生み出すことに成功している」と見ており、20年8月の前回調査から12ポイントも増加した。ブランドに関しては、4ポイント増の32%が同じ見方をしていた。
リチャード・エデルマン・グローバルCEOによると、ブランドとブランドを所有する企業は重複することもあるが、同社の調査では、企業を「労働慣行、法律に対する立場、サプライチェーン業務を含む事業全体」と定義し、ブランドは本質的に「消費者と向きあう存在」を意味する。エデルマン氏は「昨年8月時点では、この組織的人種問題への対処でブランドは企業よりもはるかに厚く信頼されていたが、今はそれが逆転している」と指摘。企業は従業員から新たな信用を得ており、回答者の76%は「雇用主が職場における人種差別への取り組みを進めている」と回答した。
マーケターは広告で多様性を考慮し、人種問題に注意するよう促しているかもしれないが、エデルマン氏によると消費者の判断基準は厳しくなっている。「問題に積極的に取り組んでいると見られているのはCEOであり、ブランド側の変化はそれほど認識されていない」
■マーケターは社会問題を意識せよ
また、最新調査では回答者の約42%が「過去1年間に人種的不平等に対する抗議への対応を見て、ブランドの使用を始めたまたはやめた」と答え、前回調査から7ポイント増えた。
多様性を備えたマーケティング担当者の育成を目指す5Sダイバーシティの創設者アントニオ・ルチオ氏は「マーケターは関連する社会問題を意識して製品を提示し、消費者の信頼を構築する必要がある」と話す。同氏はマーケティングのベテランで、交流サイト大手フェイスブックとパソコン・プリンター大手HPで最高マーケティング責任者(CMO)を務めた経験があり、当時から担当の広告代理店に多様なチーム編成を求めていた。
ルチオ氏によると、消費者の信頼を高めるために設計されるブランド構築モデルでは、CEO、CMO、官庁担当者、人事担当者の間ではるかに多くの共同作業が必要になる。かつてブランドは非常に特定の顧客の非常に特定のニーズを満たすことに力を注いだが、信頼の時代である今は、より広い社会的関連と、自らが代表を務める企業価値を考えながらそれを行わなければならない。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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