IT業界では、新型コロナウイルスの感染拡大中に雇用が急増したが、最近は景気後退懸念を受けて採用の規模縮小や人員削減が相次ぎ、より厳しい状況に備えるよう従業員に警告する企業も出てきた。
■今年の雇用は縮小か
グリーンカー・コングレスによると、労働省が最近発表した2022年6月の雇用統計のうち、ハイテク関連はまだコロナ禍前よりも多いが、一部の分野では若干伸びが鈍化している。コンピューターおよび電子機器関連の場合、就業者数は前月比で2300人増と1~5月の平均2800人超から減少した。
ITコンサルティング会社ジャンコ・アソシエイツは、22年のIT関連雇用は前年の約21万3000人から19万6000人に減少すると予測している。
短文投稿サイトのツイッターは7月上旬、人材獲得チームの30%を解雇した。電気自動車(EV)大手テスラは6月、給与所得者の10%を削減すると発表し、約200人を解雇した。動画配信のネットフリックスも加入者数の減少で約3%の人員削減を実施し、インターネット通販大手アマゾンも一部の分野で雇用を削減する方針を表明。ユニティー・ソフトウェアやゲームショップなどのビデオゲーム会社も人員を削減し、画像・動画の投稿アプリ「スナップチャット」を運営するスナップは社員に雇用を縮小すると伝えた。
インターネット交流サイト(SNS)フェイスブックを運営するメタもここ数カ月、マーク・ザッカーバーグCEOなど幹部が繰り返し事業の苦境を警告し、6月はクリス・コックス最高製品責任者が社員に「逆風に直面しているため規律と冷徹な優先順位の設定が必要」と強調した。
雇用状況の変化は、市場の混乱で大打撃を受けた分野で特に顕著だ。暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベース・グローバルは従業員の18%を、株式取引アプリ運営ロビンフッド・マーケッツは9%を削減した。
オンライン不動産仲介のレッドフィンは、21年に人員を50%以上増やしたが、6月には従業員の約8%を解雇すると発表。グレン・ケルマンCEOは「できるだけ早く成長しなければならないという大きな圧力があった。これはとても辛い変化だが、ある意味とても健康的で良いこと」と述べた。
■増やしすぎの反動
アマゾンやその同業他社の多くは、eコマース需要が急拡大したパンデミック期に前例のないペースで従業員を増やし、メタ、アップル、マイクロソフト、グーグルの親会社アルファベットの4社は過去5年間で正社員数がほぼ倍増して、計約56万3000人に達した。しかし22年に入ると、インフレ率が40年来の高水準で推移し、米経済成長率はマイナスとなって疲労の兆候が見え始め、状況が変わった。6月の米失業率は3.6%と堅調だったが、ハイテク業界では、一部の大手でオンライン広告が落ち込んでいるほか、ロシアのウクライナ侵攻で不確実性が高まっている。メタでは、4~6月期の広告収入が同社史上初めて前年同期比でゼロ成長になったと見られている。
求職ウェブサイト運営インディードのアンエリザベス・コンケル氏は「少なくとも今は、ハイテク業界は不況モードではなく調整モードにあるようだ。一部の企業は今後6カ月から1年に必要なことが達成できなかっただけ」と分析。同業のグラスドアによると、ハイテク業界では5月、業績に悲観的な見通しを持つ従業員の割合が14.6%に上昇してパンデミック開始以来最も高水準となり、同社のネットワーキング・プラットフォームでは4月以降、レイオフ(一時解雇)に関する話題が2倍以上に増えている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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