CNBCによると、オープンAIのチャットGPTを筆頭に、マイクロソフトのビングAI(Bing AI)やグーグルのバード(Bard)が利用者を増やしているほか、イーロン・マスク氏が独自に開発を進めるチャットボットも登場するとみられ、職場における生成人工知能(generative artificial intelligence)の浸透が多くの会社の最高情報セキュリティー責任者らの悩みのタネになり始めている。
▽便利なら使うのが自然
GPT(Generative Pre-trained Transformer)の背後には、大規模言語モデル群(large language models=LLMs)、つまりチャットボットが人間らしい会話をできるようにするためのアルゴリズムがある。GPTはそのアルゴリズムによって、トランスフォーマー・アーキテクチャーを使う神経回路網モデル群(neural network models)を構成する。
オープンAI(OpenAI)は現在、GPTの第4版と位置づけられるGPT-4を出している。それを土台に、自然言語による利用者からの指示や質問に答えるのがチャットGPT(ChatGPT)だ。チャットGPTは、GPTボットのなかでもっとも広く使われている。
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのパートナーであるマイケル・チュイ氏は、「勤め先のIT部署が生成人工知能ボットの業務利用を推奨しなくても、便利であれば従業員たちは積極的に使うだろう」と指摘する。
▽すでに多種多様化したIT環境にチャットGPTが加わり複雑化
40年ほど前には、パソコンとせいぜい数十種類の生産性ソフトウェアが一般的な会社で使われていたが、この十数年で状況は激変し、タブレットやスマートフォン、各種の端末、そして数えきれないほどのソフトウェアが世界中の職場で普通に使われるようになった。
ソフトウェアの大部分はクラウド環境で外界とつながり、VPN(virtual privatenetwork)も多用されている。遠隔労働が浸透した近年、セキュリティー懸念はさらに深刻化した。
その結果、会社らは、コンピューター通信網セキュリティー対策への取り組みをつねに強化し、「実態に追いつく」ことが要求される、とチュイ氏は話す。
そういった状況に加わったのが生成人工知能であり、チャットGPTがその浸透を加速させている。
▽チャットGPTを秘密裏に使う従業員たち
多くの会社のCISO(chief information security officer)らは、複雑化するセキュリティー対策や数十もの暗証語に辟易している従業員たちの燃え尽き症候群やストレスの軽減および防止とすでに闘っている。そこにチャットGPTが加わったことで、CISOらの負担が大きくなり始めている。
チャットGPTの業務利用については各社さまざまの対応がある。バックオフィス業務での限定的利用を認める一方で、取り引き先や顧客と接触する部署では使用禁止にしている会社も多い。販促コンテントの作成にチャットGPTを使う会社は多いが、全般的には禁止または制限がある。チャットGPTがどのような内容を生成するのかわからないためだ。
しかし、従業員らがチャットGPTを秘密裏に使っていることは調査報告によって判明している。作業の簡便化や時間短縮をもたらすためだが、社外秘や繊細情報を入力しての利用となると、会社にとっては看過できない事態となる。
▽生成人工知能プラットフォームのライセンス利用という解決策
チュイ氏によると、CISOの負担増を軽減するには、生成人工知能プラットフォームをライセンス利用することで、従業員らがチャットボットとやり取りする会話を監視し、企業秘密や繊細情報が保護されていることを確認するという措置が考えられる。
生成人工知能ソフトウェアのライセンスを取得すれば、データの追跡や、データ転送先との法的契約による情報保護を担保できる。
ただ、そのためには、機密情報の保護や情報保管場所の規制、従業員によるソフトウェア利用時の指針や規定の策定といった手続きが必要となる。クラウド基盤ソフトウェアで情報を保存している会社では、そういった手続きはすでに一般的だ。それを生成人工知能に適用すればよい。
▽自前開発という選択肢も
あるいは、GPT基盤のソフトウェアを自前開発するという方法もある。ソフトウェア会社に外注し、自社用にカスタマイズしたソフトウェアをつくることで、独自のGPTを使えるようになる、と人工知能基盤人材発掘プラットフォームのセイパル(Ceipal)のサミーア・ペナカラパティCEOは話す。
人材資源管理やそのほか特定の業務向けのGPTを土台にしたカスタマイズドGPTを利用すれば、第三者ソフトウェアを使う場合よりセキュリティー管理は大幅に簡便化できる。マイクロソフトはそういったカスタマイズ可能型GPTを法人向けに提供する計画だ。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
ターゲットとショッピファイが提携 〜 ターゲットのオンラインいちばに中小の小売業者らが出店可能に
-
人工知能銘柄が今後10年の株式市場を動かす 〜 シスコの元CEOのベンチャー・キャピタリストが予想
-
2024年7月8日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
スマート包帯の研究&開発が前進 〜 傷口の状態を遠隔追跡、包帯から投薬や電気刺激を可能に
-
飲食店で印刷メニューが復活~QRコード不評で
-
2024年7月1日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス
ウェザーXM、ウェブ3とIoTで気象データに革新 〜 動く気象観測所群の分散型連携網を構築
-
米消費者のガソリン車好き続く~KPMGの意識調査
-
2024年6月27日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
対中EV貿易戦争、様々な副作用も
-
傷が早く治る、次世代ばんそうこう~医師との通信も可能に
-
生体認証決済が米国で拡大しつつある 〜 マスターカードやJPモルガンも導入へ
-
米国特許商標庁、出願者らの個人住所流出が再発 〜「不注意」が原因、影響を受けた人たちに通知