ロサンゼルスで始まる「すしざんまい流」革命

ロサンゼルス・コリアンタウンに2025年8月オープンした「すしざんまい」のアメリカ1号店。なぜこの地での挑戦を決めたのか。そして、日本とアメリカ、二つの文化をまたぐ“寿司”の未来とは──創業者の木村清社長が語る、すしざんまい流アメリカ戦略。 

Sushizanamai Mr. Kiyoshi Kimura

回転寿司」ではなく「職人が握る寿司」を

ロサンゼルスに新店舗ができると聞いて、多くの人が回転寿司を想像したかもしれない。しかし、「すしざんまい」が選んだのは、カウンター越しに職人が寿司を握るスタイルだ。ロサンゼルス店には職人が常駐し、注文を受けてからその場で寿司を握る。iPadで注文するシステムを導入しつつも、本物の職人の技を楽しめる“回らない寿司”を提供している。

なぜ「コリアンタウン」なのか?意外な出店理由 

日本食レストランが多く集まるトーランスやリトルトーキョーではなく、出店場所に選ばれたのはコリアンタウン。その理由を尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「特に理由はないんです。ここが空いていたからです」
とはいえ、立地以上に重要なのは物流の利便性だという。

「ロサンゼルスは、日本から見ればアメリカの西の玄関口。豊洲からマグロを予約すれば、12時間で届きます。全日空が1日3便飛ばしているので、毎日輸送できます」
この環境が、日本と変わらぬクオリティの寿司をアメリカでも実現させる大きな鍵となっている。

オープン初日は230キロのマグロ解体ショーも 

シンプルで日本風の美しい店内

オープン初日には、230キロの最高級マグロを使った解体ショーを実施。山口県の日本海側から仕入れたこのマグロは、800人〜1000人分の寿司になったという。 
「マグロが一番人気でした。」 
また、現地での人気メニューについて聞くと、こんな意外な工夫も。 
「キャビアがアメリカではなかなか売れなかったので、“スパイシーキャビア”として、明太子を使ったクリスピーライスのメニューに変えました」 
地元のニーズに寄り添いつつも、寿司の根幹を崩さない姿勢が垣間見える。

「カリフォルニアロールを作ったのは私です」 

話は自然と、アメリカの寿司文化そのものへと広がっていく。社長はさらりと語った。
「ところで、カリフォルニアロールを知っていますか? 実は私が作ったんです。もう54年くらい前になります」
脂の少ないキハダマグロをアボカドとマヨネーズで和え、海苔が手に入らない時代には焼いた鮭の皮で代用した。これが、今や世界中で知られる「カリフォルニアロール」の原型だ。
「当時は海苔がなくてね。旅行者が日本から持ってきてくれるのを待っていた時代です」

実は「炙りトロ」も、彼の発案だった

さらに、炙り寿司の原点も語られる。 
「炙りトロを最初に出したのも私なんです。大トロは脂が強くて、時間が経つと表面が乾いてしまう。それでクレームを受けた時に、炙ってみたら美味しいと言われて」 
今では定番となった「炙り系寿司」も、当時としては革新的なアイデアだった。 

絶品かつ見た目だけでも食欲をそそる。炙り寿司も!

寿司文化をどう“アメリカナイズ”するか

すしざんまいの寿司は、どこまでアメリカナイズされるのか。 
「例えば“爆弾”と呼ばれるような具沢山の丼は、日本でも40年前からやっていました。漬け丼も、ポキ丼の前に私が始めたんです。日本発のメニューを、アメリカ風にローカライズしていくイメージですね」 
すでにある伝統を軸にしながらも、柔軟に変化させる。その姿勢が、海外展開の鍵となっている。 

日本と同じ品質を、アメリカでリーズナブルに

iPadで注文ができるカウンター

ロサンゼルスでは日本食レストランが急増している一方で、木村氏は「本物の日本食」とは何かを問い直す。 
「食材の問題、関税、衛生管理など、日本とはいろいろ違います。でも、今回はそういった点を本格的に直して、日本と同じクオリティのものをリーズナブルな価格で提供したいと思っています」 
そのためにも、現地の弁護士や会計士、労務の専門家、日本との違いに詳しい日本の弁護士など、3人の専門家とタッグを組み、運営体制を整えている。 

今後はカリフォルニアで2~3店舗を計画

今後の展開については、まずロサンゼルスを起点に、カリフォルニア内で2〜3店舗を展開予定だという。 
「そこでいろいろ検証して、次のステップを考えたいですね」 
年に5~6回は現地に足を運び、徹底した現場主義を貫く木村社長。今後の展開に注目が集まる。 

「すしざんまい」の寿司を世界へ

有名なすしざんまいポーズで記念撮影も

日本の寿司文化を守りながらも、アメリカの文化や食の嗜好に柔軟に対応する「すしざんまい」。その背後には、50年以上にわたってアメリカと向き合ってきた一人の男の挑戦があった。
「アメリカの人たちが“おいしい”と素直に感じられる寿司を、日本と変わらぬクオリティで出していきたい」
その言葉どおり、ロサンゼルスのコリアンタウンに現れたカウンター寿司には、確かな技術と信念が宿っている。

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