マイクロソフト、燃料電池をラックに統合 〜 データ・センター配電を簡素化

 マイクロソフト(Microsoft)は、燃料電池を内蔵したサーバー・ラックの実験を開始した。

 データ・センター・ノーレッジ誌によると、マイクロソフトの実験が成功すれば、高価な配電システムをデータ・センターに設置する必要がなくなり、コスト削減と節電の両方を一気に実現できる。

 マイクロソフトの研究者は、先日発表した白書のなかで、メタンガスを燃料とする燃料電池をサーバー・ラックに組み込むことで効率化と節約効果を最大限に高められる、と説明した。

 燃料電池はデータ・センターの建物向けには使われているが、ラックに直接つなげる設計では前例がない。それが実現すれば、無停電電源装置(UPS)や発電機の必要性がなくなる。燃料電池をラックに直接統合することで、サーバー・レベルの電源の必要もなくなり、電力浪費も劇的に減らせる。

 マイクロソフトは、電力会社の送電網にまったく接続されていない「データ・プラント」の構想を打ち出し、ワイオミング州シャイアンでその概念の実演プロジェクトを進めている。下水処理場内にモジュラー・データ・センターを設置し、下水処理の過程で発生するメタン・バイオガスを使用して燃料電池を稼動させるものだ。

 「データ・プラントの概念と従来型設計の主な違いは、発電所にデータ・センターを置くのではなく、発電機能をデータ・センターの内部に取り込む点だ」「こんにちのデータ・センターでは、エネルギー供給網の途中で多くのエネルギーが失われている」「小さな発電機をハードウェアに統合することで、複雑な配電システムを大幅に簡素化してむだを省ける」と、マイクロソフト・グローバル・ファンデーション・サービシズ(Microsoft Global Foundation Services)のショーン・ジェイムズ上席研究部長は説明する。

 ラック・レベルで燃料電池を使用することによって、燃料電池が故障した際にそのラックだけが影響を受け、データ・センター全体に影響しなくなる。また、「燃料電池をサーバーのそばに置くことで、直接的なDC(直流)配電も可能になり、サーバーはAC(交流)電源を必要としなくなる」と、白書で説明されている。

 さらに、UPSや発電機、スイッチが排除されれば、冷却コストも削減できる。マイクロソフトは、その設計によって先行投資を16〜20%、運用コストを3%削減できると見積もっている。

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