世界の石油供給、数十年後にはひっ迫とIEA

 石油市場では現在、需要を十分満たせる量が生産されているが、豊富な供給は数十年で終わり、将来は危険な状態まで市場がひっ迫する恐れがあるという調査報告書を、国際エネルギー機関(IEA)がまとめた。

 オイルプライス・コムによると、IEAの年次報告書「世界エネルギー展望(WEO)2014」は、世界の石油需要は2040年までに現在の37%上昇し、その多くは中国やインドといった開発途上国から生まれると予想している。先進国が省エネ努力などで需要を1バレル減らすごとに、開発途上国の消費は2バレル増える見通しだという。

 現在の世界産油量は1日に約9000万バレル(bpd)だが、需要が予想通りに高まった場合、対応するには40年までに1400万bpd増やす必要がある。米国では新技術でエネルギー生産量が伸びた「シェール革命」によって「資源は豊富」という楽観ムードが広がっているが、IEAは「米国の石油増産およびカナダのオイルサンド増産は、20年代半ばまでしか続かない」と予想している。

 シェール(けつ岩層)の埋蔵量が尽きた後は再び中東が注目されるが、この地域の生産にも大きな期待は持てない。まず、世界最大かつ最も重要な石油生産国であるサウジアラビアは、現行水準以上の大幅な生産拡大は見込めない可能性がある。イランは、西側の経済制裁で生産量が落ち込んでいるが、元通りに回復しても長期的な石油生産拡大への貢献度は小さいと見られる。

 このためイラクへの期待が高まり、IEAもこの数年「イラクの生産は現在の300万bpdから35年までには約830万bpdと3倍近くに拡大が可能」と予想してきた。予想通りなら、その間に石油価格は大幅に上昇することはないと考えられる。

 しかし、イラクは今年6月に再び内戦状態に入っており、向こう20〜30年間に石油生産を500万〜600万bpd増やすための資本投資が行われる可能性は大幅に低下しているという。

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