ES細胞含むインクで物体の印刷に成功

 英国の科学者チームがヒトES細胞(胚性幹細胞)を使った3D(立体)印刷に成功したという論文が、このほど英国物理学会(IOP)の学会誌「バイオファブリケーション」に掲載された。技術が完成すれば、実験室で人間の細胞組織を作れるようになるという。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、近年は世界中で多くの生体工学研究者が3D印刷技術を応用し、生きた細胞を材料に混ぜて立体物を作る研究に取り組んでいる。ES細胞は、あらゆる人体組織に成長する分化多様性を持つが、3Dプリンターで使うにはもろすぎることが分かっていた。

 しかし、英ヘリオット・ワット大学のウェンミアオ・シュー博士らは今回、実験室で培養したヒトES細胞を含む液体「バイオインク」を使い、プレート上で丸い水滴状に印刷するようコンピュータ・プログラムで特別設計の3Dプリンターに指示し、その通りに印刷することに成功した。

 シュー氏は今回の研究について「ES細胞の分化能力を保ちながら、傷つけずに印刷できることが示された」と説明した。印刷された水滴にはそれぞれ5〜140個の細胞が含まれている。研究にはスコットランドの幹細胞関連企業ロスリン・セラブ(Roslin Cellab)が協力しており、関連技術の商業化を目指している。

 生体工学分野における3D印刷の応用研究は急速に進んでおり、これまでに心臓弁、膝の軟骨、移植用の骨、腎臓細胞、血管、鼓動する心筋などさまざまな人体の部位が印刷されている。ただし臓器の作製にはまだ大きな課題があり、シュー氏は「栄養素を取り込み老廃物を除去する血管のような立体構造を内部に作る必要がある」と話した。

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