高機能ガラスで財布のひも緩む〜空港利用者、長居でついつい
テキサス州のダラス・フォートワース国際空港(DFW)が2017年秋、一部のゲートに調光機能のある新型の「スマートガラス」を導入したところ、バーの売り上げが大幅に増えるという想定外の効果が表れた。
■バーの売り上げ8割増
ブルームバーグ通信によると、新しいガラスが入ったのは構内のA28ゲート。東向きで、ロビーのいすや飲食店内が常に強い日差しにさらされるため、高機能ガラスで利用者の不快感を少しでも和らげようと試験的に導入した結果、レストラン併設のバーでは10月のアルコール販売が前年同月比で80%も増加。レストランの売り上げに占めるアルコールの構成比は17%と、前月の9%、前年同月の8%から大幅に上昇した。
空港の経営幹部らは、空港利用者の施設に対する印象と構内店で過ごす時間、支出との間に関連があることを分かっている。不便なことで知られるニューヨークのラガーディア空港では人々はなるべく早く施設を去ろうとするが、人気の高いソウル、シンガポール、ミュンヘン空港などではより長時間を過ごし、安全検査を通過して緊張が緩んだ旅行者は、出発までに多額を支出する傾向がある。DFWの場合、バーが涼しく薄暗くなって居心地が良くなり、お代わりをする人が増えたと考えられ、広報担当者は「明らかに影響が見られる。レストランからは以前から『暑すぎて客が居付かない』と苦情があった」と話している。
■コストは省エネで相殺
DFWが採用したガラスは、創業10年のシリコンバレー企業ビュー(View)が、商業オフィス、病院、高等教育施設、空港など利用者の満足度が重視される施設を想定して開発した「ビュー・ダイナミック・グラス」。ガラス内部の遮光機能によって透過する光の量を調節し、周囲の温度を下げる技術が使われている。ビューのラフル・バミ最高ビジネス責任者は「私たちは90%の時間を屋内で過ごしており、光、空気の質、温度、音は非常に重要になる。当社は少なくともこのうち3つに良い影響を与えている」と話す。
コーネル大学のデザイン学教授がDFWで行なった研究では、新しいガラスの近くではいすの座面の温度が以前より10〜15°F下がり、旅行者が座っている時間は従来型ガラスのままの近くのゲートより53%長く、涼しくなったゲート周辺での店の売り上げも増えたことが分かった。
ビューのスマートガラス設置にはインターネット・プロトコルや電気配線が関係し、微調整やプログラミングも可能。同社は12年以降、400件のプロジェクトに対してこのガラスを供給しており、ミシシッピ州にある工場の生産能力は2倍に拡大した。
ボストン・ローガン空港、デルタ航空(シアトル空港のラウンジ用)、デューク大学、フェデックス、リーバイス・スタジアム、リンクトイン、ウェルズ・ファーゴなど様々な企業や学校がビューのスマートガラスを購入し、サンフランシスコ国際空港は「ターミナル1」改築工事の費用24億ドルのうち300万ドルをビューのガラスに投じた。DFWでは、ほかのゲートや売店エリア約50万平方フィートにもスマートガラスの設置を計画しており、近く競争入札を実施する。設置費用は普通のガラスより20〜30%割高だが、バミ氏は「建物の耐用年数を通じて節約できるエネルギーコストを考えれば、多くの商業プロジェクトにとって簡単なこと」と話している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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