穀物業界は、世界的なタンパク質需要の上昇に対応するため、豆由来のタンパク質ピー・プロテイン(pea protein)に注目している。
■理想的な現代食
ロイター通信によると、穀物大手カーギルは2017年1月、食品メーカーのピュリス(PURIS、本社ミネソタ州)との合弁で、ウィスコンシン州にピーパウダー工場を立ち上げた。工場では黄色えんどう豆をすりつぶした粉と水を混ぜ、高速でドラムを回転させてでんぷんと繊維からタンパク質を分離してピー・パウダーを作っている。この粉はプロテイン増量剤としてワッフルの材料、スポーツ飲料、栄養バー、プロテインシェイクなどに添加されている。
両社はほかにも、交配で豆のタンパク質含有量を通常の18〜22%から28%に増やす取り組みも進めている。高タンパクの黄色えんどう豆から作ったピー・パウダーはタンパク質の含有率が約80%だという。カーギルのデイビッド・ヘンストロム副社長(でんぷん・甘味料・テクスチャライザー担当)は「未来がどこに向かっているか考える時、思い浮かぶのはえんどう豆だ」と話す。
えんどう豆はタンパク質が豊富な上、植物材料であり、グルテンを含まず、多くの意味で米国の理想的な現代食と言える。まだ市場は小さいものの、ピーパウダーなど新しいタンパク源の需要は、中国の中産階級やカリフォルニアの健康意識の高い消費者から、限られた予算で動物を太らせる必要がある畜産業者、魚の養殖業者まで、幅広い分野で急速に高まっており、穀物大手は大豆、トウモロコシ、小麦といった伝統的な商品より高い収益性を求めて特殊な食品への投資を加速させている。
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)も、ノースダコタに独自のえんどう豆加工工場を建設しており、黄色えんどう豆の購入と栽培で農家と契約している。カナダのリチャードソン・インターナショナルは、2300万ドルを投じてマニトバ州ウィニペグにタンパク質などの食品成分を研究する施設を建設中で、19年からえんどう豆やオーツの濃縮タンパク質市場に参入する考え。またフランスの加工食品、医薬品原料、添加剤メーカーのロケット(Roquette)は、現在欧州から輸入しているピー・プロテインを北米で作るため、カナダのマニトバに工場を建設している。
■需要は世界で上昇
タンパク質需要は、アジア、アフリカの新興国の所得増加などを受けて世界的に急上昇している。北米でも食習慣がより多くのタンパク質を摂取する方向にあり、ニールセン調査では17年に米世帯の35%が「パレオ(原始時代の食生活をまねした食事)」や低炭水化物ダイエットなどのタンパク質主体の食生活を行っている。この傾向は食料雑貨市場にも影響を与えており、米国では植物ベースの食品や飲料の売り上げが17年7月8日までの1年間に前年比で14.7%増加した。特に調理済み食品では肉の代用品の売り上げが増加している。
市場調査グランド・ビュー・リサーチによると、16年のピー・プロテイン世界売り上げは7340万ドルだったが、グルテンや乳糖(lactose)を含まない食事の人気や開発途上国における中産階級の増加などを受けて、25年までには4倍の3億1350万ドルに増えると予想されている。
一方、動物や植物性タンパク源の市場は25年までに487億7000万ドルになると見込まれ、植物性タンパク源の市場構成比はわずかなままだ。それだけに成長の余地は大きく残されている。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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