「リーバイス(Levi’s)」ブランドで知られるデニム大手リーバイ・ストラウス&カンパニーは、2025年までにサプライチェーンの温室効果ガス(GHG)排出量を16年比で40%削減する目標を発表した。
■同業にも呼びかけ
ウォールストリート・ジャーナルによると、同社はジーンズ、Tシャツ、ジャケットなどの商品を生産するため、39カ国にサプライヤーの縫製・繊維工場を抱えており、直接取り引きするティア1サプライヤー500社超のうち約60社で環境対応プログラムの導入を始める。同社ではこれらの業者が、生産量、GHG排出量ともに最大シェアを占めている。
また、対象となる工場の多くは他のブランドや小売店向けにも衣料、繊維を生産しているため、リーバイスは同業者に対しても模範を示したいと考えている。マイケル・コボリ副社長(サステイナビリティ担当)は「アパレル業界の同業者にこの取り組みへの参加を奨励したい。1社ではなし得ない影響を与えたい」と話す。
■順守しやすい共通基準で
近年は多くの業界で、サプライチェーンの持続可能性や公平な労働環境を重視した幅広い一体的な取り組みへの支援が拡大している。リーバイスはサプライヤーの工場で、国際金融公社(IFC)のアパレル業界環境改善プログラム「PaCT」を導入する予定。PaCTは、アパレル事業者に専門知識や低金利融資を提供し、エネルギーや水の使い方を改善する官民連携事業。同社の排出量削減目標は、企業がエミッション削減計画を設定するための共同事業「科学的根拠に基づく排出量削減目標」(SBT) によって承認されている。マサチューセッツ工科大学(MIT)輸送&ロジスティクス・センターのヨシ・シェフィ所長によると、サプライヤー・ネットワーク全体が連携して定める基準は、業者ごとに定められた異なる目標より順守される可能性が高く「影響力を行使でき、異なる要件でサプライヤーを苦しめることもなく、監査もできる」と指摘。ただし「より多くの企業が参加することで基準が低くなる懸念もある」と警告する。
■環境汚染はティア1以外も
リーバイスは新しい取り組みの一部として、自社の施設では100%再生可能エネルギーを使い、GHG排出量の90%削減(16年比)を目指すが、コボリ氏はサプライヤーの工場に行動改革を促す方が環境への影響は大きいと見ている。17年に同社の環境対策を批判する「Too Dirty to Wear」運動を展開した環境団体スタンド・アースも、今回の動きを「素晴らしい第一歩」と評価した。ただ同団体は、一部の企業のように50年までにGHG排出量の60〜70%削減を約束してもらいたいと注文をつけた。
MITのシェフィ氏は、厳密には縫製工場や繊維工場だけでなく原材料のサプライヤーや輸送も環境を汚染していることや、デニム素材は基本的に生産で大量の水を使い、化学物質が流出することも指摘。「彼らがサプライチェーンという場合、どの階層までかと聞きたい。ティア1ならその下のティア2、3、4、5を知っているか、彼らと話すことはあるかと聞きたい」と話している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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