サイバーセキュリティー会社のサイファートレース(CipherTrace、カリフォルニア州)はこのほど、2018年1〜9月に仮想通貨交換所と取引プラットフォームからハッキングによって盗まれた仮想通貨の被害額が9億2700万ドルに上り、17年通年(2億6600万ドル)から250%近くも急増したという報告書をまとめた。
■小規模盗難が増加
ロイター通信によると、サイファートレース報告書はデジタル通貨市場の犯罪行為や資金洗浄(マネーロンダリング)について調査した。最近は2000万〜6000万ドル程度の比較的少額の仮想通貨盗難が目立っており、7〜9月はその種の被害額が1億7300万ドルに達したという。
ビットコイン人気の高まりと、ほかにも1600以上のデジタル通貨が生まれたことで、暗号通貨(cryptocurrency)とも言われる仮想通貨の世界に引き込まれるハッカーは増え続け、犯罪や詐欺の機会も拡大している。
サイファートレースのデイブ・ジェバンスCEOはロイターに対し「規制当局はまだ数年遅れている。強力に資金洗浄を取り締まる法律を本格運用している国がほんのわずかだからだ」と述べた。ジェバンス氏はサイバー犯罪の解決を目指す国際組織「Anti-Phishing Working Group(偽造詐欺防止ワーキンググループ)」の会長も務めている。ジェバンス氏によると、犯罪は実際には報告書の数字より50%多い可能性が高い。現にサイファートレースも、報告されていない盗難が6000万ドル以上あることを認識しているという。
■交換所で不正資金を洗浄
調査では、資金洗浄規制(AML)が弱い国にある世界有数の仮想通貨交換所が盗んだビットコインの洗浄に使われ、その額は09年以降で25億ドルに上ることも分かった。
報告書は取扱額が最も多い20の交換所について分析した。サイファートレースはそれらの交換所の名称を明かしていないが、これは同社が仮想通貨を盗んだ犯人または有力容疑者を監視し、名指しできることを意味する。
累積洗浄額の25億ドルを算出するにあたり、サイファートレースは20の取引所での約3億5000万件の取引を調べ、その取引相手が1億件あることを確認した後、犯罪活動に関する独自のデータを用いてそれぞれの取引を詳しく調べたという。
一方、20の交換所が、23万6979ビットコイン分の犯罪サービスの購入に使われたことも分かった。これは現在の価格で約15億ドルに相当する。
ジェバンズ氏は「すべての取引所に洗浄された資金が入ってくるが、それを止めることはできない。元は不正な資金だと分かるのはいつも洗浄が行われた後であり、リアルタイムで知る方法がないからだ」と指摘した。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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