施設管理サービスを手がけるサービスチャネル(ServiceChannel)のトム・ブイオッキCEOは、2019年における小売業界の傾向や動向を予想し、1)実在店舗の自前管理、2)データ解析のさらなる拡充、3)店内買い物体験のさらなる技術化、4)実在店舗の魅力強化、という4つの動きを挙げ、その内容をフォーブス誌に寄稿した。
▽複数販路化と技術化の変革期へ
米小売業界は2018年の年末商戦で好調な業績をあげた。売上高は前年比5%以上伸びて8億5000万ドルに増え、期中の買い物の83%が実在店舗で発生した。2018年中に廃業に追い込まれた大手ブランドもいくつかあったものの、全体的には好況だ、と同氏はみている。
小売業界は、全体として大きな変化の過渡期にある。そのなかでも好調を続けるブランドらは、実店舗で培ったノウハウと機械学習のような台頭技術を組み合わせることで、有効な複数販路(オムニチャネル)戦略を打ち出すようになっている。
同氏が挙げるおもな業界新潮流には下記4つがある。
1.施設管理を自前化
顧客体験の重要性が高まっているのを背景に、その重要な一角を構成する店舗施設をみずから管理しようとするブランドが増えるだろう。
サービスチャネルの顧客でもあるソウル・サイクル(Soul Cycle)やワービー・パーカー(Warby Parker)といったブランドでは、施設管理を外注することは重要な義務の放棄だと考えるようになっている、とブイオッキ氏は指摘する。
同氏によると、実店舗の管理を自社で手がけることで、意外にもコスト削減を達成できるという。
2.データ活用がさらに重要に
データの収集と分析は、業務過程の効率化や販促の絞り込みといった側面で大きな役割りを果たすようになっている。この種のデータ活用は今後、物流や建物管理にも応用され、経費削減に貢献していくとみられる。
たとえば、大手小売店では数千社という契約業者(取り引き先)を使っているが、個々のパフォーマンスを正確に把握しておらず、別の都市や州の実績と比較することもできない。その部分にビッグ・データ解析技術を導入すれば、コスト対効果の高い業者とそうでない業者を見分けられるようになる。店内の品ぞろえも支店ごとに調整するといった細やかな対応が可能になる。
また、空調や照明、冷蔵および冷凍といった設備機器も、データを活用して効率良く管理できるようになる。モバイル機器やクラウド電算技術を使ったデータ管理は、小売業界でようやく本格化されつつあり、その動きが2019年にさらに活発化する。
3.店内買い物体験の技術化
先進技術による買い物体験をできる場所はこれまでオンラインが主流だった。ウェブサイトを閲覧してボタンをクリックするという体験から、いまでは音声認識端末に話しかけて注文できる。
2019年には、実在店舗でも先進技術による買い物体験が登場する、とブイオッキ氏は予想する。たとえば、買い物客が入店する際に顔認識で確認し、店内画面に表示する特売品をリアルタイムで調整し、個々の消費者に応じた情報発信によって個人化販促が実用化される可能性がある。
また、キャッシャーレス店舗も増え始めており、2019年にはそれが加速する。アマゾン・ゴー(Amazon Go)のような完全自動化店舗だけでなく、新興企業のジッピン(Zippin)が提供する食料品店向けの決済自動化ソフトウェアも広まるとみられる。
4.実在店舗への集客に再注目
店というのは、太古の昔から人を集める役割りを果たしてきた。小売店が魅力的な店舗設計に多額を投資する理由もそこにある。
過去10年ほどはオンライン店舗の開発に忙しく、実店舗をややないがしろにしてきた小売会社らも、2019年には流れを転換させるだろう。また、オンラインのみだった小売会社が実店舗を開店する動きもみられる。
その先がけとして、ターゲット(Target)は、本社のあるミネアポリスで28店舗の改装に2億5000万ドルをすでに投じている。ナイキ(Nike)は、オンラインで注文された商品のカーブサイド・ピックアップを実施している。
▽変革期は勝敗の分かれ目
業界が大きな変革の波にさらされるときには、廃業に追い込まれる会社が必ず出るものだ。小売業界も例外ではない。しかし、実店舗小売業界の未来には明るい兆しがある、とブイオッキ氏は述べている。
変革の結果として消費者は、先進技術が活用され個人化された買い物体験をオンラインとオフラインの両方で楽しめるようになる。それをささえるのはデータ技術だ。小売業界はデータ科学を応用するおもな業界の一つにさらに向かうことが確実視される。
【https://www.forbes.com/sites/forbestechcouncil/2019/02/07/four-predictions-for-2019-as-the-retail-renaissance-gains-momentum/#661653b315ce】 (U.S. Frontline News Inc.社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
2025年2月6日 アメリカ発ニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス, 自動車関連
加州、無公害トラック義務化を断念~排ガス規制が大きく後退
-
2025年2月4日 アメリカ発ニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス
ロサンジェルス郡の山火事で緊急対応アプリケーション群の使用が激増 〜 発生場所や大気汚染、避難命令、強風警報、さまざまの状況を逐次追跡
-
ユナイテッド航空、機内インターネット接続の試験を前倒し 〜 スターリンク端末を順次搭載へ、今春にも運用開始
-
2025年1月27日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
自動車メーカー、5G切り替えで難しい判断
-
FBI、アイフォーン同士以外ではアイメッセージを使わないよう注意喚起 〜 中国の国策ハッカーら、米スマートフォン利用者らの情報を窃盗
-
トランプ氏の返り咲きに戦々恐々とする米技術大手ら 〜 対立関係の改善をねらってあいついで寄付
-
2025年1月20日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
半自動運転システムでドライバーの注意力低下
-
高級ブランドら、ビットコイン高騰を受けて暗号通貨での決済を受け付け 〜 暗号資産家市場の掘り起こしに舵を切る
-
2025年に予想される人材資源管理の5大変化 〜 補助業務から戦略業務へと進化
-
2025年に注目される7大技術動向 〜 画像加工技術会社のパーフェクトが予想