製品を購入するよりもサービスとして有料利用することを好む消費者が増えている動向を受けて、大きな変化が製造業界に起こりつつある。デヴオップス誌によると、その変化において、機械学習と予測分析が重要な役割りを果たすとみられており、製造業の事業モデルが大きな転換(根幹変革、価値移行)に直面し始めている。
▽購入よりサービスとして使う消費行動に
顧客の期待が変わりつつあることは、いまや業界や業種を問わず、すべての企業が感じている現実だ。昨今の消費者は、製品を買うよりも、月額固定料金を払って製品へのアクセスを手に入れることを好む。
映画館での上映期間が終了した映画や車が好例だ。一昔前なら映画DVDが売れたが、近年ではDVDを買うよりネットフリックス(Netflix)で借りて逐次再生して視聴する。また、車を購入するよりもウーバー(Uber)やリフト(Lyft)を使うという消費行動が浸透している。
デジタル時代の消費形態に慣れた人たちが、いまや労働人口にも大量に流入するようになった。それを受けて、製造業界に変化の波が押し寄せている。
▽法人相手の製造業では、より大きな影響
有料サービスを主体とした事業モデルへの転換や移行は、製造業にとって根本的な変化だ。それは、製品を販売するのではなく、製品がもたらす結果へのアクセスを販売することを意味する。
とりわけ、複雑な製造機械を提供するメーカーは、顧客がおもに法人であることから、それら顧客の事業モデルの変化からも影響を受ける。業務を合理化して生産性と資本効率を高めようとする法人顧客は、機械や技術の供給会社に対して業務リスクの抑制を要求するようになっている。
▽アフターセールス・サービス部門への影響が最大
製造業は今後15年ほどかけてサービス化していくとみられる。製品販売よりもサービス販売が主流になれば、影響をもっとも受けるのがアフターセールス・サービス事業だ。
現在の事業モデルでは、購入した製品や機器を保守管理して修理するのは購入者の責任だ。メーカーは、交換部品や修理サービスの販売で付加的な売り上げを計上できる。
しかし、定額有料サービス販売の事業モデルになれば、製品が故障しているあいだには売り上げを計上できないため、修理の必要や不機能時間を極力減らすことが重要になる。
▽機械学習と予測分析の三つ用途
サービス化への価値転換においては、機械学習と予測分析が大きな役割りを果たすことが確実だ。特に下記三つの点で大きな意義があるだろう。
1.予測保守
業務過程を管理する検知器から温度や圧力、振動といったデータを常時取得し、故障や磨耗の兆候が見られ始めたらすぐに検知して対応することで、機器の不機能時間を減らせる。製造現場で機器が予定外に動作しなくなる不機能時間は、業界によっては年間200億ドルの損失の原因になっているという見積もりもある。
2.過程最適化
統計データにもとづいて過程を調整し最適の状態を達成することは、特に電力や石油&ガス精製、化学といった業界で重要性が高い。検知器からのデータを機械学習アルゴリズムに送信し、たとえば、原材料の品質に応じて工程を調整することで、生産品を最適化できる。航空業界の場合、過程最適化によって燃料使用量を1%削減できれば、向こう15年間に計300億ドルを節約できると推定される。
3.供給網と在庫の管理
原材料や仕掛品(しかかりひん)、完成品の在庫を抱えすぎることは、製造業の資本効率を悪化させる大きな原因の一つだ。そこで、機械学習を使って需要を的確に予測し生産目標を流動的に調整できれば、「ジャスト・イン・タイム」を正確に実践できるようになる。
▽データ主導の会社になることが生き残る道
高価な交換部品や修理サービスから売り上げを計上できなくなることは、製造会社に抜本的な発想転換を強いるだろう。新しい組織構造や技能、奨励制度、KPI(key performance indicator)を確立して、新しい現実に対応していかなければならない。
そういった時代に成功するには、データ主導の会社になる必要がある。製品を接続して、その状況を把握&分析する技術への投資が求められる。モノのインターネット (IoT=Internet of Things)や機械学習、予測分析を活用すればするほど、大量のデータを処理できる基幹技術が必要になり、クラウド基盤のソリューションも必要になる。
それらの変化を積極的に取り入れていく企業が生存競争に勝ち残り、そうでない企業は衰退するしかない。
【https://devops.com/machine-learning-and-predictive-analytics-are-reshaping- manufacturing/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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