IBMは、流通センターや鉱山、建設現場で働く作業員の体温や心拍数といった生体兆候情報を身体装着機器で常時測定することが、職場での事故の削減につながるとみている。一方、サプライ・チェーン・ブレイン誌によると、従業員情報の追跡はプライバシー侵害につながるという見方も強まっている。
▽あらゆる情報を分析して事故を回避
高性能検知器を搭載した腕輪やヘルメット、「スマート服」による作業員の生体兆候と現場環境データの測定で、作業員のけがや体調不良、気温や大気の質の変化、そのほかのリスクを予想して事故を防ぐ効果が注目されている。特に、危険な機械を多用する現場では、作業員が機械に接近した場合に自動停止させるといった応用法も想定されている。
IBMは、身体装着機器の活用について、「勘に頼らず、予想不能の事態を取り除くこと」が、安全対策を強化する手段だと考えている。
▽IBMとガードハット、スマート・ヘルメットを共同開発
最新の検知技術のいくつかは、ラズベリー・パイ(Raspberry Pi)のような低価格コンピュータや、ノルディック・シンギー(Nordic Thingy)として知られる開発プラットフォームの愛好家によって生まれた。IBMは、そういった最新技術とIBMの人工知能ワトソンの統合を進めている。
IBMは、スマート・ヘルメット製造のガードハット(GuardHat)と提携し、ハードウェアとソフトウェアを一体化した監視システムを開発した。スマート・ヘルメットによって作業員の生体データや、ガスといった現場環境データを常時収集し、ワトソンによってクラウド環境で分析する。
現場監督をはじめとする管理職は作業員の生産性や現場の状況、生産性と健康状態の傾向や因果関係を把握できる。
▽データ保護法遵守やデータ消去で対応可能
検知器搭載の身体装着機器は作業員のプライバシーを侵害するという懸念が指摘され、普及をさまたげる要因として浮上している。
IBMは、従業員データ・プライバシーの保護対策として、EU一般データ保護規則(GDPR=General Data Protection Regulation)に代表されるデータ保護規制の遵守や、データを1日ごとに処分(消去)する選択肢の提供、休憩中の監視機能の停止、職場以外でのデータの匿名性の維持を挙げた。
IBMは、身体装着機器と関連機器の価格低下、人工知能による大量データ処理能力の向上を背景に、企業による身体装着機器導入がますます進むと予想する。
【https://www.supplychainbrain.com/blogs/1-think-tank/post/29601-wearables-in-the-workplace-a-boon-for-safety-or-intrusion-on-privacy】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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