少子化を受けておむつの需要が低下する中、米国の紙おむつ業界は、新商品の 提供で価格を引き上げている。
■最大5倍
ウォールストリート・ジャーナルによると、米国の出生数は2018年、前年比2% 減の379万人と32年ぶりの低水準だった。紙おむつメーカーは長年、商品の値下 げによって需要を喚起してきたが、1年ほど前から値上げ路線に切り替え、高価 な新商品を出しながら、低価格商品の売り上げを減らすことなく紙おむつ全体の 価格を引き上げることに成功している。
業界大手キンバリークラーク(Kimberly-Clark、本社テキサス州)は7月、「Huggies(ハギーズ)」シリーズから植物性素材を使った「Special Delivery」を発売。価格は市場で最も安い商品の約5倍もする。
一方、ライバルのプロクター&ギャンブル(P&G、オハイオ州)は、グーグルのリサーチ部門と提携し、モニターや動作センサーなどの技術を活用したビデオカメラと連動する赤ちゃんモニタリング・システム「Lumi」を開発。年内に発売を予定している。このシステムは、赤ちゃんの睡眠パターンを記録し、専用のおむつにはセンサーが付いて、濡れると親の電話に知らせる仕組みだ。
36億ドルの米紙おむつ市場で、P&Gとキンバリークラークは合わせて80%のシェアを持っている。両社とも新商品を、おむつに高いお金を払ってもいいと考える親が多い中国でも発売している。
P&Gはこの種のおむつを「super premium」「super,super premium」と呼んでおり、デイビッド・テイラーCEOは「意味のある利点を提供すれば、消費者が喜んでお金を払うことは証明されている」と話す。
■もっと上げられる
P&Gでは、おむつは最も多くのフィードバックを得られる商品の1つだ。これは親が商品にはまだ改善の余地があると考えている証拠で、彼らはおむつはもっと柔らかくでき、漏れやかぶれを減らせると考えている。これらの新商品には、100%天然素材のおむつや、ファスナーがより頑丈なおむつなどがある。
キンバリークラークのマイケル・スーCEOも、米市場では高価な紙おむつを販売できる余地がまだまだ残っていると見ている。あるプライベートレーベル商品は1枚約11セントで、最近までは最も高価な商品でも35セント前後だったが、ハギーズの「SpecialDelivery」は55セントする。
安い商品と高級品の価格差は、ほかの消費者用品ではがもっと大きい。練り歯磨きの場合、最も安い物は1オンス当たり18セントだが、高い商品には1ドルを超える物がある。
一方、価格の上昇によってこれまで紙おむつ市場への参入に苦労していたプライベートレーベルや新興のメーカーに商機が生まれる可能性もある。モーニングスターのアナリスト、エリン・ラッシュ氏は「誰もが値上げの話をしている。市場の逆風対策としては結構だが、付加価値のあるイノベーションが伴わなければ難しい」と指摘する。ただ、本当に役に立つ機能を提供し、親が新商品を試したくなるような宣伝方法を見つけられれば成功の可能性はあるため、今後の動向が注目される。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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