北米日産でこのほど、デンバーのデータセンターで発生した停電がきっかけで事業に大きな影響が出た。
オートモーティブ・ニュースによると、今の自動車業界は、消費者、小売業者、流通網、製造工場、金融機関が複雑なデジタル通信システムでつながれてい る。コロラド州の猛暑を原因とする日産の停電騒動では、中部時間の8月21日午後6時に復旧するまで4日間にわたりグループのシステムがすべて停止。影響は、約1300件にのぼる米国の日産/インフィニティ・ディーラーのほか、カナダやメキシコの多くの小売業者の業務にまで及んだ。
■ディーラーの生命線
「NNANet」と呼ばれる北米日産のシステムは、販売業者が車や部品の注文、車種ごとのリベート情報の取得、車両のリコール確認、保証請求、工場の資金調達情報の取得などに使う重要なツールで、フロリダ州の日産ディーラー所有者は「日産に関することはすべてNNANetを通して行っており、これはわれわれのライフブラッドだ」と話した。また、この停電でテネシー州スマーナとミシシッピ州キャントンの工場も生産停止に追い込まれた。
各ディーラーは閉鎖がこれほど広域で超時間に及んだことに驚き、システムがサイバー攻撃に遭ったのではないかと考える人もいたが、広報担当者は「停電でバックアップシステムが機能せず、システム停止が長引いた」と説明している。
■最悪のタイミング
今回の騒動から、自動車メーカーは多くの教訓を得られる。アトランタのITリスク管理支援会社アプティガ(Apptega)のアームステッド・ウィットニーCEO は、データ、アプリケーション、システムのバックアップを国内のさまざまな場所に作っておく必要性を強調する。「そうすれば、ある施設や地域が大きく混乱しても別の地域が影響を受ける可能性は低く、混乱も数分か数時間で収まる」
電話や電子メールなどの通信システムを、事業の中核アプリケーションと同じ場所に置かないことも重要だ。ニューオーリンズ郊外で新車・中古車の販売店 Ray Brandt Automotive Groupを経営するレイ・ブラントCEOは、日産の混乱は予想できたはずと指摘しながら「影響を最小限に抑えるための有効なバックアップ計画がなく、収拾に4日もかかったことに驚いた」と話した。
システムの停止中、日産とインフィニティの店舗は、新車の注文や販売報告、部品のオンライン発注、保証申請の処理などができなかった。顧客も、リコール情報を得られない、サービス予約を変更できない、イグニッションキーの再プログラムができないといった不満をソーシャルメディアに投稿した。
金融部門の日産モーター・アクセプタンスも影響を受けたため、ディーラーは顧客のローン返済情報を確認できず、顧客は月々のローン支払いができなかっ た。一般的にディーラーはほとんどの販売を月末に計上する傾向にあり、システム停止は最悪のタイミングで起きた。
ブラント氏は、停電でローン情報にアクセスできず、客の対応ができなかったことで月間販売が約10%減ったと見ている。日産は、停電によるビジネスの中断を考慮して8月のディーラー販売目標を10%下方修正した。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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