カリフォルニア州議会は11日、ウーバー・テクノロジーズやリフトに代表されるいわゆる「ギグ経済」の事業モデルに逆風となる歴史的法案を可決した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ウーバーはその直後、同法案を受けて商習慣を変える考えがないことを明示し、議会や州法、行政と引き続き争う姿勢をあらためて鮮明にした。
▽ギグ経済型事業モデル
ギグ経済(gig-economy)型事業モデルは、会社が構築したサービス提供プラットフォームに個々の労働者が個人として労力を提供することで成立するサービス・モデルを指す。ウーバー(Uber Technologies)やリフト(Lyft)のほか、たとえばアマゾンの一部の配達業務では、個人が請け負い業者として配達する体制が整備されている。
そのほか、低価格量販店チェーンのコスコでは、会員らが買い物リストをオンライン上で作成すると、注文者に代わって最寄りのコスコ支店に行って買い物して届けるという買い物代行業者が請け負っている。米市場ではそういった個人業者を「パーソナル・ショッパー」と呼んでいる。アマゾンにもパーソナル・ショッパーという専門サービスがあるが、アマゾンの場合、スタイリストが消費者にファッション助言を提供するもの。
ギグ経済では、そういったサービス請け負い業者らが個々の契約業者として受注し、契約内容に応じて報酬を受け取る。
▽社員としての分類を義務化
カリフォルニア州の可決法案「州法案5(Assembly Bill 5=AB5)」は、特定の請け負い業者らを「社員」として再分類することを会社に義務付けるため、ウーバーとリフトの事業モデルにとっては深刻な脅威となる。運転者たちを社員として分類すれば、給与や保険、各種の福利厚生といった支出が発生するためだ。
両社の事業モデルは、売り上げをもたらす運転者たちを個人の請け負い業者(契約労働者)としてあつかい、非常に高い柔軟性と安い賃金を実現する労働力として事業を運営している。売り上げに応じた報酬だけを払うため、人件費を抑えられるという利点がある。両社はそれでも、両社あわせて年間10億ドル単位の赤字を出している。
▽2020年1月1日に発効へ
経済全般としては、ギグ経済は急成長しているが、ウーバーやリフトの運転者たちからは労働条件に関する不満が噴出している。
両社の運転者たちは、労働時間ではなく客を乗せて走った料金にもとづいて報酬が算出される。仕事に使う車とそれにかかるすべての費用は運転者の責任だ。当然ながら各種の保険もない。
AB5では、ギグ経済労働力に対し、労働時間にもとづく最低賃金や福利厚生を提供することを雇用主に義務付けている。ただ、AB5は、特定の会社名や具体的な事業モデルを特定していない。
ギャヴィン・ニューサム州知事(民主)は11日、可決案が知事室に届けられれば署名する、と話した。同可決案は知事署名を経て2020年1月1日に発効する。
▽ウーバーの最高法務責任者、「われわれは今後も法廷で争う」
ウーバーのトニー・ウェスト最高法務責任者は11日、AB5について「運転者たちの利益にならない。組織的活動の権利を運転者たちに与えるものでもない。福利厚生を保証するものでもない。実際、同可決法案は、配車サービスや相乗りサービスの運転者たちについていっさい言及していない。われわれは、同可決法案を受けて運営方法を変える考えもない」と声明を発表した。
同氏はさらに、「労働者の分類方法についてカリフォルニア労働法を試す条項がAB5に含まれたが、だからといって、われわれの運転者たちを自動的に再分類するわけではなく、請け負い業者としての現行の労働力分類が誤って解釈されることが起きれば、われわれは今後も法廷で争う」と話した。
カリフォルニア州議員らはウーバーの姿勢を予想し、市や郡の司法長官らがAB5を支持する体制の構築に先週から取りかかっている。
【https://www.wsj.com/articles/california-governor-still-in-talks-with-uber-lyft-over-gig-workers-law-11568212014】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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