自動車メーカーが導入している歩行者を守るための最新安全機能が、一部の特 に危険な状況でほとんど機能しないことが米国自動車協会(AAA)の最新テスト で明らかになった。
■歩行者の死亡事故が急増
ウォールストリート・ジャーナルによると、これらの安全システムは、カメラ やレーダーなどのセンサーで車の進路上の人を検知して事前にドライバーに知ら せ、ドライバーの対応が間に合わない時はシステムが自動緊急ブレーキを作動さ せるよう設計されている。メーカーは最近、この技術を積極的に宣伝するように なっているが、トヨタは「セーフティ・センス」、ホンダは「ホンダ・センシン グ」という具合にメーカーによって呼び方が違うことが多い。
米国では近年、自動車事故で死亡する歩行者が急増しており、運輸省道路交通 安全局(NHTSA)によると、2017年は約6000人と08年から35%も増加した。同じ期 間に搭乗者の死者数は7%減少している。AAAの自動車エンジニアリング・ディレ クター、グレッグ・ブラノン氏は「歩行者の事故死者数は危機的な状況になりつ つある。歩行者検知システムは命を救う可能性はあるが、ドライバーは事故防止 で頼りすぎてはいけない」と警告している。
■夜はまったく作動せず
AAAは最新テストで、シボレー「マリブ」、ホンダ「アコード」、トヨタ「カムリ」、テスラ「モデル3」という4種のセダン・モデルを使い、駐車場で止まっている車の間から子供が飛び出す場合、右折時に道路を横断中の大人と出くわす場合など、歩行者にとって最も危険と思われる場面を想定して機能の作動状況を調べた。
この結果、比較的低速の時速20マイル(mph)で移動する場合でさえどの車もうまく対応できず、子供は89%の確率でひかれ、右折テストではすべての車が歩行者のダミーに衝突した。30mphになるとシステムはほぼ効果を発揮しなくなった。
また、AAAによると歩行者が死亡する事故の4分の3は夜間に起きているが、これらの安全システムは暗いとまったく作動せず、暗い道路を横切るダミーに向かって車が突進しても車を停止または減速できなかっただけでなく、衝突前に歩行者の存在を警告することすらできなかった。
■過信は禁物
これに対しホンダは「オーナーズ・マニュアルでこの技術の限界を警告しており、ドライバーは常に注意して車を制御し続けるよう忠告している」と説明する。「マリブ」のメーカーであるGMも「アクティブセーフティー(事故防止)機能には消費者にとって利点があるが、ドライバーの主たる責任を受け継ぐ技術ではない」と警告。現在ほとんどのモデルにこの技術を標準搭載しているトヨタは「AAAのほかのテストでは良好な結果が出た」と述べている。
AAAは、宣伝の仕方によってはこれらの機能にテスト結果以上の働きがあるという印象をドライバーに与える恐れがあると考えており、ブラノン氏は「残念ながら、システムの有効性がマーケティングに追いつくまでには少し時間がかかる」と話した。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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