5G通信が実現する未来の働き方 〜「拡大現実」による仮想労働がもたらす7つの変化

次世代無線通信技術の5Gの普及は、「自宅勤務」のあり方に抜本的な変化をもたらす可能性がある。クォーツ誌によると、5Gの普及は拡大現実(XR)の実現を意味し、5GとXRによって、働き方や労働環境が激変すると予想される。アクセンチュアは、5GとXRによってもたらされる在宅勤務(遠隔労働)の7つの変化を予想した。

▽VRやAR、MRを統合したXRが実現へ

5G通信は、接続速度や通信容量、反応時間を格段に向上させる。3Gから4Gへの進化によってHD(高精細度)動画をスマートフォンで視聴できるようになったように、無線通信技術が次世代に移行する結果として、画期的な新製品や新サービスが可能になる。

5Gがもたらす技術進歩の一つは、仮想現実(VR)技術の飛躍的な向上だ。VRや拡張現実(AR)、複合現実(MR=mixed reality)を統合した拡大現実(XR=extended reality)も実現すると予想される。

▽真に仮想的な働き方を可能に

5GとXRは、真に仮想的な働き方を可能にする。たとえば、あらゆる場所や施設でデジタル・ツイン(digital twin、物理的事象をデジタル上に模擬的に再現すること)が作成される。米国にいる工場管理者がベトナム工場を現場にいるかのように体験できる。

企業幹部は世界各地の会議室にアバターを出席させられる。医師は投影された立体ホログラムを使って、離れた場所の手術に立ち会える。

現行の自宅勤務と大きく異なるのは、機器や車両といった物理的なものの操作が必要な場合でも、5GとXRを使えば可能になる点だ。現時点では、データ入力や資料作成、グラフィック・デザインといったデスク業務に限定されている。

クォーツ誌に寄稿したアクセンチュアは、5GとXRが自宅勤務のあり方に7つの変化をもたらすと予想する。

1.「職場」の概念があいまいに

これまでは仕事の場所が生活の場所を大きく左右してきたが、仮想労働によって、物率的な場所に縛られずに働けるようになる。現行の自宅勤務は、自宅から職場環境にアクセスすることを意味するが、5GとXRは、職場を自宅にもたらす。

2.専門職や幹部も複数勤務先で仮想労働

医師は一般的に、一つの病院に勤務するが、5GとXRによって、地理的な制約から解放され、さまざまの場所で勤務できるようになる。企業の経営幹部ですら、ニューヨークの会社と香港の会社の役職を兼務できる。ギグ経済が加速する。

3.生産性をさらに高める

XRがもたらす仮想環境では、工場管理者が現実に近い感覚で工場内を歩き回れるだけでなく、操業状況に関する各種のデータも即座に参照できる。物理的に工場内を歩き回るよりも生産性が高まる。

4.技術研修に熱心な企業が優位に

ウォルマートやAT&T、JPモルガン・チェイス、アマゾンは、人工知能やブロックチェーン、ロボティクスを数千人単位の従業員に訓練している。XR技能を従業員に学ばせる会社は、業務遂行を世界規模で仮想化できるため、生産性や競争力を大幅に高める。

5.企業文化を世界規模で浸透させる

企業は、好ましい企業文化を確立するために多大の努力を払っている。特に世界的企業は、これまでも世界各地で同じ文化を浸透させるという課題に取り組んできた。仮想労働が主流になれば、その取り組みがさらに重要性を増す。

6.人材維持のために新たな価値を従業員に示す必要性

5GとXRの活用によって複数の勤務先で働く労働者が増えるのを背景に、企業は優秀な人材を引き付けるための価値提案をいままで以上に明確にする必要がある。報酬体系や福利厚生制度について、社員にとっての魅力を高めていくといった方策が考えられる。

7.「燃え尽き」症候群の防止が重用に

5GとXRでいつでもどこでも働けるようになれば、つねに仕事をしているような感覚に陥ったり、つねに接続していなければならないという強迫観念にとらわれたりする可能性がある。そういった就労環境に起因する「燃え尽き」現象(症候群)を防止する必要性が出てくる。

【https://qz.com/work/1707685/how-5g-will-transform-our-ability-to-work-from-home/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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