eコマースの拡大と配達の迅速化で、人口密集地の近くにある産業用スペースの奪い合いが激しくなっており、特に小規模な倉庫の需要が急騰している。
■賃料は5年で34%上昇
ウォールストリート・ジャーナルによると、不動産コンサルティング大手CBREグループのデータでは、米国では7万~12万平方フィートの倉庫の賃料が過去5年間に33.7%以上も上昇し、1平方フィート当たりでは平均6.67ドルに達している。同時にそれらの空室率は11.3%から7.4%に低下し、倉庫市場では最大の落ち込みとなっている。
これに対し、従来の小売りや産業用配送網を支えてきた大型倉庫など、25万平方フィートを超える大型の産業用スペースの賃料上昇率は15.6%にとどまっている。産業用スペース全体の賃料は2014年4~6月期から19年同期までに23.9%上昇した。
この結果、北東部、サンフランシスコのベイエリアのほかシカゴ、ロサンゼルス、ダラスといった主要都市の近郊でスペースを探す物流業者や小売店などは物件を見つけにくくなっており、CBREは「柔軟性が低下し、価格が上昇して、小さなプレイヤーにとっては厳しい状況」と指摘する。
CBREは、輸送・物流業者や小売店の間で高まっている軽工業用地や都市に近い物件の需要などによって、20年は産業用スペースの賃料が全体で約5%上昇すると予想している。
■目的は迅速配送
オンライン小売りアマゾンなどの販売大手は、eコマースの成長を受けて全米に多くの注文履行センターを開設しており、過去10年の産業用不動産市場に活況をもたらしている。こうした業者の多くは州間道路に近い100万平方フィート以上のスペースで配送作業を行っているが、最近は注文から2日以内の商品配達を期待する消費者が増えた都市部の近くに、小さな配送拠点を加える例が増えている。
これらのスペースの多くは、商品の保管ではなく迅速な配送を目的としている。アマゾンは、地価の高いニューヨーク市などで一部の注文履行センターの面積を縮小しており、最近シアトルでは大型配送トラックが進入できるランプを備えた3階建ての倉庫をリースした。複数階の倉庫は米国では初めてといわれている。
アマゾンは特典制度プライム利用者向けの配達時間を最大2日から1日へと短縮する計画で、小売店や物流業者には対抗を迫る圧力が高まっている。また、小さな倉庫の賃料高騰の背景には、近年の物流拠点の建設ではほとんどが大型施設に重点が置かれたこともある。CBREによると、新築倉庫のうち12万平方フィート未満の小型物件が占める割合は、1990年以降平均して約1%なのに対し、25万平方フィート超の大型物件は約3%を占める。
人口が密集した都市部に産業用スペース建設を考える土地開発業者は、小売り、集合住宅、オフィス、複合施設など、より高い税金や賃料が期待できる使い方との競合に直面している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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