人材管理(HR)における技術応用は2020年にますます進むことが確実視される。HRテクノロジスト誌では、HR向け技術の専門家約10人によるその7大動向予想を伝えた。それによると、各種の人工知能機能やオンライン機能によって求職や求人、採用のほか、遠隔労働をはじめとする働き方、多様化するコミュニケーション手法の変化、オンライン協業体制の整備といった動きが顕著になる見込みだ。
1.技術による職能拡張と、人材調達サービスと求人会社の接続化が加速
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の最高人事責任者(CPO)マイク・フェンロン氏は、「(人工知能によって)業務が簡便化され生産性が上がり、また、業務過程から摩擦要因が除去され、従業員を反復作業から解放する」と予想する。
かたや、米調査会社フォレスターのデイヴィッド・ジョンソン氏は、「2020年にさらに多くの会社が、従業員の労働力を技術によって拡張することで差別化を図るようになる」「優良企業では、科学優先の取り組みをさらに強めるだろう」と話した。
また、人工知能基盤のオンライン求人マーケットプレイスを運営するスカウト(Scout)のCEOは、「クラウド電算で走る人工知能機能のさらなる浸透によって、多くの人材調達サービス業者と顧客会社らが接続化され、人工知能がHRに大きな変革をもたらすことになる」と述べた。
2.遠隔労働に対応するオン・デマンド労働力プラットフォームのさらなる進化
オンライン研修プラットフォームを提供するホーン(Hone)の共同設立者兼CEOのトム・グリフィス氏は、「より多くの会社が在宅勤務やフレックス制度を実施するなか、HR技術の運用がそういった勤務体制多様化に向けて進化する必要がある」と指摘する。
同氏によると、さまざまの働き方に対応したHR管理としてクラウド上のオン・デマンド・プラットフォームが主流化し、それに応じてHR管理ソフトウェアも変化する、と予想する。
3.人材多様化はHRの職務ではなく採用過程の一部に
セールスフォース(Salesforce)のグローバル人事採用部門上席副社長アナ・レシオ氏は、「人材の多様化を推進するという仕事は、もはや人材採用担当者の職務ではなくなり、技術によって自動化される人材採用過程の一部に組み込まれる」と予想する。
4.多様のコミュニケーション経路を求める若い労働力への対応が重要に
人材採用者と求職者をつなぐオンライン・プラットフォームを提供するセンス(Sense)のアニル・ダーニ CEOは、「次世代のHR技術の普及をうながす原動力は、ミレニアルズとZ世代が職場に流入することだ」と話す。
ミレニアルズ(ミレニアル世代)とは、1980年代から1990年代中盤、あるいは2000年代初頭までに生まれた人たちで、Y世代(Generation Y)と呼ばれることもある。Z世代(Generation Z)は、1990年代中盤から2000年代中盤に生まれた人たち。
それらの世代の労働者は、幼年期からパソコンやアイポッド、スマートフォン、タブレット、各種のオンライン・サービスに慣れ親しんだため、多種多様のコミュニケーション経路(手法)を当然視する。
それと同時に、報酬よりも企業文化のような就労環境を雇用主に求める傾向が強い。そのため、HR担当者らは、そういった次世代の労働者が働きやすい職場にするためにさらなるデジタル変革に投資する必要がある。
5.コミュニケーションと成果の透明化および管理を促進する技術活用
企業向けソーシャル・メディア管理プラットフォーム(SMMS)を提供するスプリンクラー(Sprinklr)の最高文化&人材責任者(Chief Culture and Talent Officer)ダニエル・アダムス氏は、技術が管理職と従業員のあいだにおける透明性の必要性を増加させていくと考えている。
その一環として、中間管理職と部下たちの間で誠実な会話ができるようにするためのコミュニケーション技術の改善や応用を促進することを経営幹部らが求められるようになる、と同氏は予想する。
社内コミュニケーションの量と質の拡充は生産性の向上につながることは実証済みだ。2020年には、その拡充にともなって、中間管理職や部下たちの成果を管理するための透明化が進む、というのが同氏の見方だ。
6.フリーランサーの活用を最適化するオン・デマンド人材モデルの必要性
開発業者向けクラウドソーシング(crowdsourcing)のプラットフォームを提供するトップコーダー(Topcoder)のマイケル・モリスCEOは、2020年最大のHR向け技術傾向として、雇用主がオープンかつオン・デマンドのオンライン人材調達網をさらに活用できるようになることだと予想する。
会計ソフトウェア大手イントゥイットの調査によると、2020年には米労働人口の40%がフリーランスになる可能性がある。特定会社に勤務しないそういった人材が散在する状態では、それらの人材をいかに活用するかが会社にとって重要な要素となる。
アップワーク(Upwork)によると、2018年時点で46%のZ世代就労者がすでにフリーランサーとして働いていた。
7.労働力のさらなる流動化に対応する社内人材職能開発が重要に
米国商工会議所基金(U.S. Chamber of Commerce Foundation)の教育&労働力センターのジェイソン・ティスコ副社長は、労働市場が「より流動的になっていく」と予想する。つまり、辞める人間が増えるため、人材補充もめまぐるしくなるということだ。したがって、必要に応じて適材を見つけて確保するというモデルが必要となる。
雇用主は、そのためのデジタル・ツール群を活用することが求められると同時に、人材補充が難しい場合の人材確保策として既存労働力の職能開発(技能研修、再教育)の制度やシステムを構築することも求められる。たとえば、機械学習基盤のデータ科学者を簡単に採用できない場合には、既存労働力のなかから適材を発掘して職能開発するデジタル研修プラットフォームを整備する必要が2020年にさらに強まることは確実だ。
【hrtechnologist.com/articles/ai-in-hr/top-hr-tech-trends-2020】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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