米株式市場の長期好調を受けて、ドット・コム・バブル再来の懸念があらためて持ち上がっている。CNBCによると、著名投資家たちのあいだでも意見は分かれ、それを象徴するかのように、21日と22日に二人の投資業界重鎮が対立する見方を明言した。
▽ドット・コム・バブルの状況とは根本的に異なる
ドット・コム好況時(90年代終盤)に数十億ドルの巨額を稼いだ著名ベンチャー・キャピタリストのマーク・キューバン氏は22日、昨今の株式市場について、1999年を連想させる動きではない、と明言した。同氏は、1999年にブロードキャスト・ドット・コムをヤフーに57億ドルで売却した起業家として知られる。
「当時の金利は非常に高かった」「そして、株式市場に参加する投資家の数も多かった」「多くの個人デイ・トレイダーたちが当時のバブル相場をつくり出すのに加担した」「それらすべては現在の株式市場ではみられない」と同氏は取材に答えた。
同氏によると、昨今の1日あたりの取り引き量は当時から後退したことから、インデックス・ファンド(株価指標と同じように変動することを目指す投資信託。株価指数に採用されている株式銘柄でおもに構成される投資信託)の台頭と上昇を誘発している点でも、当時の状況とは根本的に異なる。
▽マーケットサイクルという観点では、いつ暴落しても不思議ではない
米株式市場や金融業界では、最近のブル市場(強気相場)について1999年のドット・コム・バブル(株式市場の大暴落が起きたのは2000年3月)と同様の過熱投資を示す動きではないか、という憶測や懸念が再浮上している。
米株式市場は何年か前から比較的好調で、その傾向がこの数週間にさらに顕著になった。また、資本主義経済では一般に、平均7~10年ほどの周期で好況と不況が繰り返される。そのため、2008年9月に始まったリーマン・ショックから10年以上が経過する現在、株式市場の暴落がいつ起きても不思議ではない、という見方も2010年代終盤あたりからくすぶっている。
株価の大暴落だけ見ても、1987年の「2回目のブラック・マンデイ」、1999~2000年のドット・コム・バブル破裂、そして2008年の「大不況」(リーマン・ショック)と、平均約10年ごとに株価暴落が起きている。
▽ジョーンズ氏、バブル説の根拠二つを明示
昨今の好況市場を懸念する著名投資家の代表的人物としては、ポール・テューダー・ジョーンズ氏が挙げられる。同氏は21日、現在の株式市場について、「史上もっとも狂った金融と財政が混ざった状態」とダボス会議で公言した。
ジョーンズ氏はさらに、現在の株式市場が1999年を彷彿とさせる、と明言し、二つの材料を挙げた。「1999年初頭のPCE(personal consumption expenditure、個人消費支出)は1.6%で、CPI(Consumer Price Index、消費者物価指数)は2.3%だった」「現在、それらの数値は1999年当時とまったく同じだ」と同氏は指摘する。
ただ、同氏は、連銀の金利が1999年上半期に4.75%だったのに対し、現在では1.5~1.75%であるため、ドット・コム・バブル時と現在のブル市場には決定的な違いがあることを認めている。その点では、キューバン氏と共通した見方だ。それでもジョーンズ氏は、現在の株式市場が暴落の瀬戸際にある可能性について警鐘を鳴らしている。
▽「金利を注視していれば予想できる」
かたやキューバン氏は、米株式市場の好調が2020年も持続する、という予想を強調する。
金利が低い水準で維持されるかぎり、「株式市場に資金が流れるのは当たり前」と同氏は明言した。低金利時代にもかかわらず、ドット・コム・バブル時代のようにナスダックが5年間で500%も高騰したというような事態からほど遠い現状は、市場が正常に推移している証拠とも解釈できる。
S&P500は、年初以来約3%上昇し、2013年以来最高の上昇を記録した2019年の1年間に29%上昇した。
「金利を注視していれば、株式市場に何が起きるかを予想できる」「現在の市場が過熱しすぎているかどうか、1999年と同じ状態かどうかを聞かれれば、私はノーと断言する」 とキューバン氏は述べた。
【cnbc.com/2020/01/22/mark-cuban-says-heres-how-youll-know-the-market-has-topped.html】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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