職場で孤独を感じる若者が増えていることが、保険会社シグナの調査で分かった。
■仕事の意義感じず
ウォールストリート・ジャーナルによると、調査は2019年7~8月、労働者約6000人を含む全米の1万400人以上を対象に行われ、就労するZ世代(18~22歳)の80%以上、ミレニアル世代(23~37歳、Y世代とも)の69%が孤独だと答えた。年長になるほど孤独と感じる労働者は少なく、同僚からの疎外感や、同僚との感情的な距離感を抱く割合も低かった。
若い労働者の多くは、オフィスで虚無感や本当の自分を隠す必要性を感じている。Z世代とミレニアル世代の60%以上は職場に親しい友人がいるものの、より年長の労働者と比べると仕事にあまり意義を感じず、自分と会社の価値観の違いを強く感じている。
調査では、孤独感や社会的孤立感を評価する「UCLA孤独感尺度(Loneliness Scale)」と呼ばれる20項目の質問への答えを基に、孤独かそうでないかを判断した。
■SNS好きな人ほど
シグナのダグラス・ネメセック行動保健担当最高医療責任者(CMO)は、コミュニケーションの形が若い世代に孤立感を生んでいる可能性があると指摘しながら「電話や対面の会話など本当の関係づくりにつながるやりとりを避け、電子メールやテキストメッセージを好む傾向がある」と話した。
ソーシャルメディアの利用と孤独との関連性も見られ、ソーシャルメディアのヘビーユーザーは75%近くが孤独で、ライトユーザーの52%より多い。ネメセック氏は「フェイスブックやツイッターに何千人友人がいても、より強いつながりを感じる助けになるとは限らない」と述べた。
ソーシャルメディアと孤独との関連は前年より強まっており、18年はヘビーユーザーで孤独な人は53%、ライトユーザーでは47%だった。19年は米国人全体でも孤独な人が前年比7ポイント増の61%となった。
在宅勤務の増加も、オフィスでの感情に影響を与えている可能性がある。今やテレコミューティングは人気の制度になり、19年はフルタイムの在宅勤務を認める企業が前年から4ポイント増えて27%となったが、在宅勤務者は他の社員との関係には意味がなく、誰にも頼れないと感じる傾向が強い。
■業務にも影響
孤独な労働者はそうでない労働者より病欠が2倍も多く(9.5日対4.2日)、ストレスで仕事を休むことが多いため、雇用側にとっては重大な問題になる可能性がある。ペンシルベニア大学ウォートンスクールオブビジネスのシガール・バーセイド教授(経営学)の調査では、孤独な労働者は組織との結びつきが弱く、上司による業績評価が低いという結果が出ている。
バーセイド教授によると、孤独は社交能力を低下させ、同僚との情報共有が多すぎるまたは少なすぎるという問題が生まれて人を周りからとっつきにくい人間にする。すると「つながりたいと思う人々との間に距離ができ、孤独がある一点に達すると元に戻ることが非常に難しくなる」。
また、職場の孤独感のような感情は周りに伝染する恐れもあり、バーセイド教授は「これは個々の従業員の問題ではなく、会社全体の問題」と指摘した。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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