ロサンゼルスの連邦地裁のドーリー・ジー判事は10日、ウーバーとポストメイツが求めたギグ労働者に関するカリフォルニア州法の施行差し止め請求を棄却した。CNBCによると、同判断は「ギグ経済」型事業モデルにとって深刻な打撃となり、地域経済だけでなく、技術プラットフォームを土台にギグ労働者に依存する新興企業の業績にも影響をおよぼすと予想される。
▽需要発生時だけ働く「ギグ労働者」
ギグ労働者(gig worker)とは、単発経済(gig economy)の労働力として働く個人を指す。独立した個々の労働者が単発または短期、あるいは需要発生時だけに労働力(サービス)を提供するという契約にもとづいて経済活動する形態がギグ経済だ。
ポストメイツ(Postmates)は、クーリア・サービスを提供する新興企業で、同社の配達要員は、モバイル・アプリケーション基盤の配車サービス最大手ウーバー(Uber)の運転手と同様にギグ労働者とあつかわれている。
▽カリフォルニアの州法、ギグ労働者も福利厚生の対象に
ウーバーとポストメイツが差し止めを求めたカリフォルニアの州法は、ギグ労働者を社員と同等にあつかうことを義務付ける内容だ。
ギグ経済企業は、運転手や配達員といった労働力を個人事業主として位置づけているため、一般的な雇用主が社員に提供する福利厚生を負担しない。
ギグ労働者らは、ウーバーやポストメイツのサービス・プラットフォームに登録した個人のサービス提供者として機能する独立業者であるため、社員のような福利厚生対象労働力ではない、というのがギグ経済型会社の言い分だ。
▽判事、原告が受ける打撃は公益より重要ではない
ジー判事は24ページの判決文のなかで、同法によって両社が経済的打撃を受けるものの、それは、賃金や雇用管理の正常さを支えるという州法が目指す公益(公共の利益)より重要ではない、と説明した。
同判決は、ギグ経済型会社にとって大きな逆風だ。ウーバーとポストメイツは、社員ではなく独立契約労働者として雇うことで、福利厚生という大きなコストの支出を避けてきた。しかし、今回の判決によって、カリフォルニア州内で働く両社のギグ労働者たちに各種の保険や有給休暇といった福利厚生を提供しなければならなくなる。
▽ウーバー、控訴するかどうか検討中
ただ、ジー判事は、両社の訴訟の意義(利点)に関しては判断せず、また、今回の請求棄却判断は訴訟自体を止める効力を持たない。したがって、両社は訴えを高裁に持ち込むことができる。ウーバーは、判決内容を精査して、控訴するかどうか近々決める、と話した。
カリフォルニア州内には約45万人のギグ労働者がいる。それらの労働者は、モバイ ル・アプリケーションを介して、移動や配達といった需要が発生した際にサービスを提供し、その売り上げの一部を収入として得ている。
▽柔軟な労働形態や雇用機会を壊す、と批判
ベンチャー・キャピタリストや投資家らは、両社の訴訟の行方を注視している。医療保険やそのほかの福利厚生の負担、賃金引き上げが義務付けられれば、ギグ経済型事業モデルの利益率に大きな影響がおよぶためだ。
アプリケーション基盤のギグ経済会社らは、個々のギグ労働者らの事情や都合にあわせた柔軟な労働形態といった現行の利点が同法によって損なわれ、雇用機会の減少を引き起こす、と反発している。カリフォルニア州議会が成立させた法律によって州内の雇用機会をみずから減らしている、とギグ経済会社は激しく批判している。
【cnbc.com/2020/02/10/judge-denies-uber-and-postmates-request-to-halt-california-gig-worker-law.html】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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